映画評 「SPACE BATTLESHIP ヤマト」

日本の映画ファンなら、この映画は観るでしょう。
少なくとも、ある一定以上の年齢の人たちにとっては、「宇宙戦艦ヤマト」は格別なもの。そんじょのアニメとはまるで存在感が違う別格の存在。
それを無謀にも実写化しようというのだから、その意気やよし。
アニメの感動を超えるとかそういうレベルの前に、見るに耐える映画になるのかどうかさえ心配される企画。そこへのチャレンジには、喝采を送りたい。

とまあ、企画自体は賞賛したいのだが、映画の出来はまた別物。
正直、残念レベルの一作であった。

よかったところを挙げようとすると、ちと苦しい。
映画として成立していたところくらいか。そこを心配していたので。
あと、音楽やアナライザーの声などが、昔の記憶をくすぐったりするところはよかった。

一方、「残念ポイント」を挙げだすと、これはきりがない。
細かいところは抜きにして言えば、人物が幼稚すぎる。
地球を救う、という、世界的プロジェクトの担い手であるのに、そうした使命感を伝えてくれない。だから、感情移入ができない。
「学園祭を成功させよう」というノリと同じレベルで描かれている。

木村さんと黒木さんの絡みも、不要であった。
お二人の演技も、お金を払って、時間をかけて、大画面で見るには非常に苦しかった。
集客の点で、メジャー俳優を使うのは理解できるのだが、二人をかけたのはさすがにどうだっただろう。
ラストシーンも、正常な神経の持ち主には納得できない。真面目に作っていないことが、ありありとわかる。

そのほか、突っ込みどころは満載。
日本人の繊細さ、細部へのこだわりといったものは、ほとんど感じられなかった。こうしたＳＦで、そこが見せられなければ、予算のなさ、技術のなさだけが浮き彫りになってしまう。

それでも、この映画を観たことに悔いはない。
映画スタッフにも、この作品にチャレンジしたことについては拍手を送りたい。
こうした無謀な挑戦は、これからも続けて欲しい。
ただ、もう少しストーリーやセリフにも魂を入れていただきたかった。軽く、薄い。
そこは、悲しかった。

さて、おなじく伝説のアニメを実写化する「あしたのジョー」はどうだろうか。