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図書館は出版社の敵か [ヨモヤ]

日本書籍出版協会の文芸書小委員会が、公共図書館での文芸書の取り扱いについて配慮を求める要望書を、全国約2,600館の公共図書館の館長あてに送付したという。
当然ながら、こうした要望書が送られるのは非常に珍しいことらしい。
同委員会は、
「出版界からの声と住民の要望とのバランスに配慮され、文芸書・文庫本の購入や寄贈に、格段のご配慮をいただきたい」
と求めているようだ。
出版社側は、図書館によるベストセラー本の過度な購入や、利用者への寄贈の呼びかけに危機感を覚えているのだそうだ。
要は、図書館がただで貸してしまうから、本が売れなくなって困っているということである。

出版不況と言われて久しく、書籍販売は減少の一途をたどっている。
一方で、図書館による貸し出しは2011年までは右肩上がりに増え、その後も下がらずほぼ横ばいだから、確かに両者に負の相関関係があるように思えなくもない。
また、利用者からの要望が多いことに加え、貸出冊数が評価の基準にされている図書館も多いと思われることから、ベストセラーを大量に購入している図書館が存在していることも事実だろう。
しかし、そのことと書籍販売の低迷を一直線に結びつけるのはどうだろう。

書籍が売れなくなったのは、情報源としてネットに押されているからであり、娯楽として携帯に負けているからであろう。
もちろん人口減少も痛いが、この環境でも売り上げを伸ばしている業界はいくつもある。
金を出してまで読みたいと思える本が少なくなったということに尽きるのだと思う。
テレビを見る人が減っているのと同じ構図である。

確かに、図書館の姿勢としてベストセラー本をまとめ買いするのはいかがなものかと思う。
貸出件数を増やすことだけを求めては、「無料貸本屋」と揶揄されても仕方ないだろう。
書籍の売上減少につながっているかどうかはさておき、図書館のあり方については見直していくべきだろう。
かつて、調べものと言えば図書館だったが、今やGoogle先生に聞けばなんでも答えてくれるし。

言うまでもなく、出版社と図書館は、志を共有する仲間である。
出版社が良い本を作り、図書館はそれを広め、それを残す。
今回の要望書も、別に対立関係をあおるものではないと理解しているが、なんとなくしっくりこないものも感じた。
どんなにITが広がっても、紙の本は不滅であろうと思っている。
しかし、今までと同じような役割や位置づけを守り続けられるかどうかはなんとも言えない。
ネット社会において、本はどのような存在であり続けるべきなのか、あり続けられるのか、ともに考えていただきたいところである。

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コメント 2

ポン太

最近はハズレ本リスクを過度に嫌うようになってしまったので、図書館で借りるスタイルを基本としています。しかしそれだと書き手側の方々に申し訳ないので、10冊中2、3冊は買うようにはしておりますが、業界側に多少は貢献しているのでしょうか。良い本を出したくなるような業界を買い手側からも作っていきたいとは思ってはいますが。
by ポン太 (2016-12-24 10:29) 

淋

まったく同じような行動をとっています。
by (2016-12-25 06:36) 

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