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映画評 「ある船頭の話」 [映画評]

俳優オダギリジョーさんの監督作。
長編映画では初監督となる今作は、長年温めていたオリジナル脚本であるらしい。
オダギリさんは、役者としてもなんだか気になる存在であり、監督作も観てみたかった。
なかなか評判もいいようだ。

主演は柄本明さん。
私が観た映画館では、「火口のふたり」という作品も上映されていて、
こちらの主演は長男の柄本佑さん。
父は老境の作品を、
長男はエロ全開の作品を、
同じ映画館で同時期に公開中という痛快な親子である。

タイトルどおり、主役は柄本さんが演じる船頭。
長年の懸案であったらしい橋の建設が進むある山村で、
船頭は黙々と川を渡し続ける。
実直な人間、偉そうな人間、事情を抱えた人間、
などなどが船頭の船で川を渡り、船頭は聞き役に回る。
「橋ができたら仕事がなくなるだろう」
と心配されても
「いや、皆が待っていますので」
と船頭は優等生的に答える。

職人らしく、
黙々と、ひたすら仕事をこなす。
しかし、船頭も人間である。
内面に黒い面も持ち合わせている。

表と裏、
正と邪、
善と悪。
これらは意外と短い距離で入れ替わる。
ちょっとしたきっかけで、同じ人間で別の面が噴出することがある。

映画の狙いは、概ねうまく行っていると思うが、
船頭の内面であるという存在がペラペラしゃべるのはちょっと興醒めだった。
しゃべらせないと観るものには伝わらないと思ったのだろうが、
しゃべらせて伝えるしかないのならそれは伝わったことにはならない。

ラストもどうか。
大きな波乱があるのだが、
波乱がない方が沁みただろう。

出演は、柄本さんのほか、村上虹郎さんや川島鈴遥さん。
村上さんは印象的な演技をされる俳優さんで、本作でもその持ち味を発揮されていた。
川島さんは、大切な、そして難しい役どころを精一杯演じられていた。
目力の強さを、しっかり映されていた。

「ある船頭の話」は、人の内面に切り込む作品。
映像は美しく、丁寧な演出とも相まって、
初監督作であるオダギリさんの力が発揮されている。
が、一刻も早く次回作が観たいとまでは・・・。

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