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映画評 「37セカンズ」 ~ 2020年最初の衝撃 映画ファンなら見逃す手はない ~ [映画評]

本作「37セカンズ」は、ベルリン国際映画祭をはじめ、世界で高い評価を獲ているという。
それに恥じぬ力作だった。
監督兼脚本のHIKARIさんは、大阪出身の多彩な女性。
アメリカで映画を学び、本作で長編デビューを果たした彼女は、
現在、アメリカでも多くのオファーを受けているという。
まあ、このレベルの作品を作れる人がそうそういるはずはない。

冒頭から衝撃的というか刺激的な映像である。
主人公は障害者であり、実際に障害者の中からオーディションで選ばれている。
障害者が演じるシーンとして、ほとんど見ることのない場面であった。
奇をてらった感もなくはないが、私は作り手の宣戦布告と受け取った。
「手加減しねえから、しっかりついて来いよ」
みたいな。

しかし、かといってとんがり過ぎて観客を置き去りにしたりはしない。
ストーリーでぐいぐい引っ張る脚本が素晴らしい。
障害が一つのテーマになっているが、もっと普遍的な広がりがある。
さらに映像も美しい。

惜しむらくは、最後の展開が唐突過ぎた点である。
主人公が、ある人に会いに遠くまで行くのだが、
いや、遠すぎるでしょう。
なぜそんな設定にしてしまったのだろう。
ここがもったいなかった。
それでも、この秀作を根本から傷つける痛手ではない。
ラストシーンも実に気持ちがいい。
いい映画だった。
監督・脚本のHIKARIさん。
いやはや、すごい人が現れた。

ちなみに、タイトルの「37セカンズ」は、
生まれた時に、37秒間息をしていなかったことで、身体に障害を抱えてしまったことを示す。

主演は、佳山明さん。
身体に障害を持つ女性たちが日本全国で一般公募され、約100名の応募者の中からHIKARI監督に見出されたのだという。
本作が演技初挑戦とのことだが見事だった。
喝采、大拍手。
脇を固める神野三鈴さん、渡辺真起子さん、板谷由夏さんといった女優陣も奮闘。
個性全開で映画に説得力を増させている。

映画鑑賞の楽しみの一つは、新しい才能に出会うこと。
本作では、その楽しみが存分にかなえられる。
HIKARIさんの次回作が待ち遠しい。
映画ファンの皆さん、「37セカンズ」を見逃す手はありません。

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