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映画評 「MOTHER マザー」 [映画評]

この映画を好きだ、という感想を持つ人は少ないのではないだろうか。
観ている最中はずっと嫌な気持ちになるはずであり、
後味の悪さも格別である。

長澤まさみさんと阿部サダヲさんというビッグネームを使って、
徹頭徹尾救いのない映画を作る。
当然、大ヒットするはずもない。
どうしてこの映画を撮ろうという気になったのだろう。
どうしてこの映画を撮らせようという気になったのだろう。

本作は、駄作ではない。
いやむしろ、非常によくできた映画だと思う。
傑作、と評する人もいるだろう。
しかし、よくできた作品であればあるほどなおさら感じてしまう。
どうしてこの映画を撮ろうという気になったのだろう。

映画の作り手は、
人を感動させたり、
人を喜ばせたり、
人を怖がらせたり、
人を泣かせたり、
人を考えこませたり、
そうしたことがしたいと思うのではないだろうか。
そして、エンタテインメントとして成立させ、悲惨な話でもどこかで救いを持たせたりするのではないだろうか。
本作のように、巨悪ですらない、ひたすらただ駄目な人間を描くモチベーションはどこから来るのだろう。

繰り返すが、本作は駄作ではない。
むしろ、隙のない非常によくできた作品だと思う。
脚本も、演出も、俳優陣も、すごかった。
観てよかったと思う。
だからこそ感じてしまう。
どうしてこの映画を撮ろうという気になったのだろう。
映画って何なのか、
ということを今更ながら考えさせられた作品だった。

最低の母親役を長澤まさみさんが熱演。
見事に演じ切られた。
息子役の郡司翔くん(幼少期)、奥平大兼くん(少年期)も素晴らしかった。
映画の説得力を増させていた。

監督は大森立嗣さん。
一切の妥協なく、救いのない映画を作り上げられた。
すさまじい手腕であると思う。

「MOTHER マザー」は一分の緩みもなく作り上げられた衝撃作。
個人的には、改めて、
映画とは何か、
創作とは何か、
といったことを考えさせられた。
最悪の後味で、誰にでも勧められる作品ではないが、
映画ファンならば勇を振り絞ってご覧あれ。

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