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映画評 「許された子どもたち」 [映画評]

6月1日から、2館で上映が始まった本作。
口コミで反響が広がり、32館まで上映が拡大。
「カメラを止めるな!」的な流れだが、コメディだったカメ止めと対照的に、
こちらは徹底してシリアスな作品。
最初のシーンから最後まで緊張感が持続する。

映画のホームページには、
「罪を犯したにも関わらず許されてしまった子どもはその罪をどう受け止め、生きていくのか。
大人は罪を許された子どもと、どう向き合うのか。」
とある。
罪を犯した子どもは、小学生の頃には反対に激しいいじめを受けていた設定となっている。
彼をいじめていた相手も許されたのだろうか。

こうした映画では、最終的には救いのようなものが描かれる場合が多い。
罪を犯した子どもが悔い改めるとか、
かばってばかりだった過保護の親が目覚めるとか、
相手に許されるとか。
しかし、現実世界ではそうならないことも多いだろう。
罪を犯した者はかえって被害者を憎み、
被害者は被害者であるにかかわらず周りから疎まれる、といった具合に、
どんどんどんどん悪い方へ悪い方へと。
本作も、皆が底なしの奈落へ落ち込んでしまう。

昇華される方向へ進んだかと思えた流れが、
最後で無残に断ち切られる。
そして、ラストも実に後味が悪い。
監督がそうしようと意図したものであり、それは成功している。
撮ろうと思った題材を撮りたいように撮った感じがして好ましい。
映画の後味は苦過ぎるほどだが、
作り手の思いは伝わってきた。

ただ、途中、やや過剰と思われるシーンがある。
普通の子どもたちの残忍性を描く場面だが、
リアリティに欠ける感があって、少し残念だった。

出演しているのは、ほとんどが無名の若手俳優たち。
それが作品にリアリティを加えている。

いじめる側、いじめられる側、
いじめた側の保護者、いじめられた側の保護者、
という要素に加え、
ネットの暴力が加わって、さらに複雑さを増している。
本作では、警察にも、弁護士にも正義がない。
見たくないが見なければならない世界なのだろう。

「許された子どもたち」は、作り手の強い思いが伝わる作品。
この映画を好きな人も嫌いな人もいるだろうし、
評価する人も評価しない人もいるだろうが、
撮りたいものを撮ったという心意気は伝わる。
映画はそうありたい。

#許された子どもたち
公式HPはこちら
http://www.yurusaretakodomotachi.com/
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