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書評 「月まで三キロ」 [読書記録]

職場の近くに図書館がある。
これは本当にありがたい。
もちろん、今まさに読みたい本が必ず置いてあるわけではない。
それでも、行くたびに何か出会いがある。

その図書館では、いつも何かの特集をやられている。
「漫画」とか「イタリア」とか特定のテーマを掲げ、その関連本を展示されているのである。
せっかくなので、行くたびにそのコーナーから少なくとも一冊は借りるようにしている。
そのコーナーがなければ会うことのなかった本と巡り合う。

最近の特集は「月」。
ちょっと学術的な本もあれば、
アポロの月面着陸はなかっただろう的な本もある。
私は綺麗な表紙に惹かれて
「月まで三キロ」という本を手に取った。
どんな内容かもわからないし、
著者の伊与原新さんのことも知らなかったが、
気軽に手に取れるところが図書館のいいところである。

「月まで三キロ」は、書下ろし短編集。
タイトルとなった作品を含め、6つの短編で構成されている。
そのどれもが、
優しく、
優し過ぎず、
おだやかで、
切ない。
風景が浮かび、余韻が残る作品集だった。
いいストーリーがあり、
いい登場人物がいて、
いい結末が用意されていた。
必ずしもハッピーエンドではないが、いい締めくくりの。
タイトル作以外、「月」とは関係なかったが、それはそれとして。

著者の伊与原新さんは、神戸大学理学部地球科学科卒、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、
専門は地球惑星物理学というバリバリ理系の方。
「月まで三キロ」でも、ところどころそうした専門知識が散りばめられていた。
しかし、押しつけがましくなく、知ったかぶりっぽくもなく、ほどよい感じで心地よかった。
どの作品も映画的で、光景が浮かんできた。

伊与原さんのことを知っている人からすれば、「何を今さら」と言うことだろう。
しかし、知らなかった私からすれば、素敵な出会いだった。
図書館が近くにあってよかった。

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