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映画評 「はりぼて」 ~川越スカラ座にて鑑賞~ [映画評]

本作は、富山県のローカルテレビ局であるチューリップテレビが制作したドキュメンタリー映画。
同社は、「政務活動費を巡る調査報道」によって2017年度の日本記者クラブ賞特別賞などを受賞しており、この映画はさらに取材を続け、なおも続く議会の腐敗や開き直る議員たちの様子をとらえたものとなっている。

映画は、長老クラスの市議会議員が政務活動費を不正に受給していたことが次々に発覚するところから始まる。
チューリップテレビスタッフが、情報公開で得られた文書から地道な調査を積み重ねたものであり、
こうした頑張りが評価され、日本記者クラブ賞特別賞を受賞したのだとわかる。

不正受給は、与党野党を問わず出るわ出るわで14人が辞職した。
また、これを追及していた議員が、議会事務局への不法侵入で書類送検されたりもした。
市長は、「議会のことだから」と距離を置くスタンスであるが、映画の中では批判的に描かれている。

取材に当たったチューリップテレビの五百旗頭幸男さんと砂沢智史さんのお二人が共同監督を務めている。
疑惑を追及した二人だが、五百旗頭さんは退社され、砂沢さんは異動により報道から外された。
背景に何があったのかうかがい知れないが、そこも映画に収められている。
お二人は、生粋のドキュメンタリー映画監督というわけではないのだが、テレビで培ったノウハウを活かして、しっかりした映画として仕上げている。
2時間、集中して観ることができた。

映画の惹句には、
「報道によって人の狡猾さと滑稽さを丸裸にさせた」
「虚飾を剥がせ!この映画こそ日本の縮図だ!!」
などとある。
それはどうだろう。
この報道には意味があると思うが、ここに出てくる議員たちのしたことは決して巨悪ではない。
やったことはまったくいただけないし、市民の代表として恥ずべきことだと思うが、
闇のようなものは、少なくともこの映画からはうかがえない。
軽い気持ちでやられていたようにも見えた。
もちろん、だから許されるというものではない。
ないのだが、議員たちが次々と頭を下げる姿を見ても、留飲が下がるということもなかった。

映画自体は楽しく観ることができたし、身につまされる場面もあった。
ただ、議員の素顔といったところには迫れていないし、
議会の現状についてのより深い洞察も示されなかった。
そういう映画ではない、と言えばそれまでだが、心の奥底まで届かなかったのもまた事実である。

この映画を観たのは、川越スカラ座という昔からある映画館。
公式ホームページによれば、
1905年に開館し、
川越スカラ座という名称になったのは1963年らしい。
2007年にいったん閉館し、同年復活という歴史がある。
なんとも味のある建物で、いつまでも残ってほしい映画館である。
「はりぼて」は人気らしく、結構埋まっていた。
なんとなくがやがやした感もあり、シネコンとは全く違う雰囲気が楽しかった。

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