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映画評 「草の響き」 [映画評]

本作は、「函館シネマアイリス25周年記念作品」である。
シネマアイリスと言われても、私を含めピンと来ない人がほとんどだと思うが、
北海道函館市にあるコミュニティシネマだそうだ。
ネットで外観を見ると、非常にこじんまりとしていて、ぱっと見、映画館とはわからない。
こうした映画館が上映を続け、記念作品まで作られるとは、素晴らしい。

原作は、函館市出身の作家・佐藤泰志の小説。
心を病み、故郷の函館に戻った男が、運動療法としてランニングを勧められる。
男は、雨の日も、風の日も、ひたすら走り続ける。
走っているうち、男2人と女1人の高校生3人組と出会い、一緒に走るようになる。
平穏が訪れつつあるように思えたが、大きな波乱が・・・。
という感じのストーリー。

主演に東出昌大さん。
自らの狂気に怯える難しい役をしっかり演じられた。
私生活面ではいろいろあるようだが、それはそれとして。
妻役に奈緒さん。
この1月ほどの間に、奈緒さんを映画で観るのは実に4回目。
どの作品でも非常に重要な役を演じておられた。
高校生役の3人は、演技には不慣れであるそうだ。
確かに、実に素人っぽかった。
好感が持てなくはないが、さすがにもう少し頑張ってほしかった感はある。

映画は、文学的であった。
理不尽な死が描かれ、
理不尽さゆえに観ている側に「?」が募るが、
人の死は案外そういうものだと思う。
理由などなく死を選んでしまうことがあり、残されたものが困惑する。

それぞれの行動に、観ている側が置いていかれる感もあったが、
説明が多過ぎるよりはいい。

ただ、エンタテインメントとして観たとき、どうなのかという問題はある。
グサッと来たか、というとそこまでには至らない。

「草の響き」は、作家性の強い作品。
薄いストーリーをなぞるだけの作品より引き付けるものはあるが、もう一歩。
それはそれとして、
本作のように、地域に根差した作品が撮られるのはうれしい。
シネマアイリスの30周年記念にも期待したい。

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