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映画評 「波紋」 ~ 情念の監督 圧巻の演技 ~ [映画評]

強烈な映画である。
脚本も務める荻上直子監督のオリジナル作品で、
筒井真理子さんが大暴れされている。

失踪、介護、新興宗教、障害者差別、更年期障害、ゴミ屋敷、カスハラ、
といった様々な要素が盛り込まれているが、
個々の問題を掘り下げるというより、
一人の女性の七転八倒を描いているととらえるべきか。
のたうち回るのが筒井真理子さんであり、ひしひしと伝わってくるものがある。

なんでこんな映画作ったんだろう、
この企画の意図はなんだろう、
と首を思い切りかしげたくなるような作品が多いが、
本作は違う。
監督の情念が爆発し、
しかし単なる暴走に終わらせない脚本としてまとめ、
それを受けとめた女優が炸裂している。
作られるべくして作られた映画を観るのは気持ちがいい。

強烈であるだけに、観る人を選ぶ面はあるだろうけれど。

筒井さん演じる主人公は、
義父の介護を押し付けられた形で夫に失踪される。
気の毒な境遇であるが、被害者という感じはしない。
それどころか、共感力が低く、障害者を平気で差別する人間であり、
主人公を応援する気にはさせない。
しかし、それがいい。
安易に同情の対象にさせてしまう映画が多いなか、
本作は人間を突き詰めて描いている。
最高に苦しいときに笑ってしまうのも人間である。

ラストシーンは、唐突に訪れる長回し。
筒井さんの演技はまさに圧巻。
すでに演技に定評のある彼女だが、
本作で何か大きな賞を取ってもらいたい。

ダメ夫役に光石研さん、
頼りにならない長男役に磯村勇斗さん。
さらに、柄本明さん、江口のりこさん、平岩紙さん、ムロツヨシさん、木野花さん、キムラ緑子さん、安藤玉恵さんといった面々が脇を固める。
メンバーを並べるだけでなんだか怖い。
耳の障害のある津田絵理奈さんが、それを活かした役で出演されている。

「波紋」は、見応えのある腹に応える一作。
本作が大ヒットすることはないだろうが、
こうした作品が評価され、多くの人に観ていただけることを願う。

タグ:波紋
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