SSブログ

映画評 「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」 [映画評]

タイ映画史上の最高のヒット。
各国で大絶賛。
などとあおられ、日本でも口コミで動員を伸ばしている本作。
私が観た映画館も満席で、一番前の一番端の席になんとか潜り込めた。

これだけの評判作だから、当然面白いものと思っていたのだが、アレ?
全くつまらないということはないにしても、ピンと来るものがない。
登場人物の造形は中途半端だし、
行動はいちいち意味不明。
これでは、全く感情移入できない。
スカッともせず、考えさせられるほどの深さもなく。

映画サイトの紹介を引用すると、ストーリーは、
『高校生たちによるカンニングを描いたクライムドラマ。
天才的な頭脳を持つヒロインがテストで友人を救ったことをきっかけに、入試でトリックを仕掛けようとするさまを描き出す。』
といった感じ。
設定は面白そうなんだから、もうちょっとなんとかならなかったのか。
カンニングのトリックも、「はにゃ?」という感じ。

ハラハラドキドキするシーンもなくはないのだが、気持ちが登場人物に移っていないから、ツッコミどころを探してしまう。
そうやって見ると、陳腐なだけに映る。

タイの格差問題などが垣間見える社会派的な要素もなくはないが、それにしたってもうちょっと人物の描き方をしっかりしてくれないと。
私にはまったくはまらなかった。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

今、無人島に1枚だけCDを持っていけるとしたら、フリッパーズ・ギターの「カメラ・トーク」 [ヨモヤ]

この前、電車に乗っていたら、突然フリッパーズ・ギターの「Wild wild summer」という曲が聴きたくなった。
もうすっかり秋なのに。
「Wild wild summer」を聴いていたら、続けて「バスルームで髪を切る100の方法」も聴きたくなった。
これらは、「カメラ・トーク」というアルバムに入っている。
2曲続けて聴いているうちに、
「今、無人島に1枚だけCDを持っていけるとしたら、『カメラ・トーク』だなあ」
とふと思った。

フリッパーズ・ギターと言われても、「誰それ」と思われる方も少なくないかもしれない。
無理もない。
彼らの活動期間は、1987年 - 1991年と短いし、解散してから30年近く!経つのだから。
フリッパーズ・ギターは、メンバーの変遷はあったが、基本的には小山田圭吾さんと小沢健二さんの二人組ユニット。
ギターバンドという趣きでは、全くない。
解散後、小山田さんはコーネリアス名義で音楽活動を続けられ、小沢さんは王子様キャラで大ブレイクされた。
「カメラ・トーク」は、彼らのセカンドアルバム。
代表曲と言われることの多い「恋とマシンガン」がアルバムの冒頭を飾っている。

どんなアルバムか?
と聞かれたら、
わかる人にはわかってもらえるのではないかと期待するのだが、
庄司薫さんの「赤頭巾ちゃん気をつけて」
のようなアルバムであると答えたりしてみたり。
若気の至りとでも言うべきピリピリした緊張感を、
クールな外見で包み込み、
あくまでもポップに、
しかし、心は叫んでいる。
のだが、
ただまあ、能書き抜きに楽しい曲の連発でもある。

今頃になって、彼らが再結成するなんてことはないだろうし、もし集まっても「カメラ・トーク」の曲を演奏するとも思えないし、演奏しても微妙な感じになるだけだろう。
それでも、いつか一緒に演奏しているところが見たい。
決して叶わないだろうけれど、そう思う。

「無人島に持っていくとしたら」
は、もしもシリーズの定番である。
来月になったら、
「やっぱりサザンのどれかだな」
「プリンス殿下の、『Purple Rain』か『Parade』でしょう」
「1枚となれば、ビートルズのベスト盤しかない」
「オアシスの2枚目かな」
「岡村ちゃんの『家庭教師』!」
「スタイルカウンシルの『Café Bleu』か『Our Favourite Shop』で迷うなあ」
などと、すっかり心変わりしているかもしれない。
しかし、今は「カメラ・トーク」である。
アイデア満載の楽しい曲がこれでもかと入っている。
なのに、なぜか切ない。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

YUIMETALの脱退は残念   ~ BABYMETALの今後はどうなる? ~ [ヨモヤ]

今年2018年、韓国のボーイズグループ・BTS(防弾少年団)が、アメリカのヒットチャートを示すビルボードで1位を獲得して大きな話題になった。
アメリカで成功すればいいというものではないとは思うが、アメリカで売れるのがアジア音楽界の一つの目標でもあったから、その意義は小さくない。
2年前、BABYMETALが、日本人アーティストとしては坂本九さん以来53年ぶりにトップ40に入ったのだが、それを大幅に超える快挙である。
BABYMETALファンとしては、ちょっと悔しい思いをしている人もいるかもしれない。

2013年から2016年頃までのBABYMETALの進撃はすごかった。
アイドルとメタルの融合、
という、わかったようなわからないコンセプトを引っ提げ、
既成の枠組みをどんどん壊していく様は痛快だった。
コンセプトの面白さにどうしても目が行くが、
ホーカルを取るSU-METALの飛び抜けた歌唱力があり、
MOAMETALとYUIMETALの信じられないくらいパワフルなダンスが絡まり、
神バンドが圧巻の演奏をする、
というトータルの音楽性が評価されていた。

進撃が止まったのは、2017年だろうか。
活躍を伝えるニュースが聞こえなくなり、
YUIMETALが長く不在となった。
神バンドのギタリストであった藤岡幹大さんの急死も影響したのだろうか。
そして、ここに来て、恐れていたとおり、YUIMETALの脱退が発表された。

三人組ユニットとは言っても、歌っているのはSU-METALだけであり、ダンサーは入れ替えが利かないわけでもないかもしれない。
しかし、あの三人が揃ったからこそのBABYMETALであった。
二人になったBABYMETALは、BABYMETALと呼べるのだろうか。

とは言え、YUIMETALこと水野由結さんとしても、相当悩まれた末の結論であろう。
数十人ものメンバーのいるグループでも、脱退は苦しい選択になるだろうが、BABYMETALは三人である。
自分が抜けることのダメージも十分理解されていたと思う。
こうなってしまった以上、新しい出発を祝福したい。
以下は、水野さんからのメッセージの後半部分である。

「BABYMETALを応援してくださっているファンの皆様、悲しませてしまって本当にごめんなさい。
もう1度ステージに立ちたいという強い思いもありましたが今も体調が万全ではないこと、そして以前からの私の夢、水野由結としての夢に向かって進みたいという気持ちもあり、今回このような決断をいたしました。
BABYMETALとして、貴重な経験を沢山させていただき感謝しています。
私は恵まれているなと感じる日々でした。みんなで笑ってひとつになれたライブ、楽しくて幸せな時間でした。
またいつか水野由結として皆様にお会いできるように努力し邁進します。
8年間本当にありがとうございました。」

私は生でBABYMETALのライブを一度も見たことがないが、それでも胸が切なくなる文章である。

ガールズグループの宿命は、メンバーが成長したときに方向性が変わらざるを得ない、ということである。
メンバーが成長してしまったBABYMETALは、水野さんが抜けようと抜けまいと、いずれ大きな岐路に立たされていただろう。

再び、世界に向けて進撃を開始してほしいが、BABYMETALのそういう時代は終わったのかもしれない。
いい夢を見せてもらったが、ここで終わるのはやはり残念である。

nice!(2)  コメント(1) 
共通テーマ:仕事

映画評 「教誨師」 [映画評]

今年の2月、日本を代表するバイ・プレイヤーであり、多彩な仕事ぶりから、
「300の顔を持つ男」
との異名を持った大杉漣さんが急逝された。
本作は、大杉漣さんの最後の主演映画であり、唯一のプロデュース作品でもある。
密室劇という設定も好きだし、
ロケ地にも関心があり、
よき映画であることを願った。
思い入れのある作品が困ったものだと悲しくなるから。

さて、タイトルとなっている「教誨師」とは、
『監獄内における受刑者の徳性涵養 のため講説する者』
『刑務所で受刑者などに対して徳性教育をし、改心するように導く人』
とされている。
教誨という言葉の音が教会と同じなため、なんとなくキリスト教に限定されたイメージがあるかもしれないが(この映画で大杉さんが演じられるのもキリスト教)、実際にはいろいろな宗教者が担当されている。

映画では、大杉さん演じる教誨師が、死刑囚6人と対話する。
密室の中、一対一でのやり取りが繰り返される。
懸命に道を説く大杉さんだが、死刑囚たちはたやすくは心を開かず、大杉さんの思いは届かない。
あからさまに論争を仕掛けてくる若い死刑囚がいるが、思いをぶつけてくるだけ、まだいい。
敬意を表しているフリをして、なんとか取り込もうとしているものや、
全く違う方向を見ているものなどさまざまである。
しかし、それがいい。
道を説かれて、素直に従うものなど、実際にはごく少数であろう。
しかもこの映画の登場人物は、犯罪者であり、かつ死刑の執行を待っている面々である。
すんなり心に沁み込むはずがない。
そこをそのまま描いているところが、観ていてスカッとはしないものの、胸に届くものがある。

ただ、いくつか残念な点もある。
教誨師の過去の描写はなにやら薄いもので、これはない方がよかった。
教誨師の人間臭さが魅力であり、説得力も増させていたが、少し無力であり過ぎる感もあった。

出演は大杉さんのほか、
玉置玲央さん、烏丸せつこさん、五頭岳夫さん、小川登さん、古舘寛治さん、光石研さんら。
一癖も二癖もある死刑囚を、個性派俳優陣がノリノリで演じられている感じがして楽しかった。
烏丸せつこさんには、NHK-FM「サウンドストリート」を聴かせていただいていた青春の思い出もある。

映画「教誨師」は、観る人によって大きく印象が変わる映画だと思う。
どの立場でどの視点で誰に肩入れして観るかによって、全く違う見え方がするはずだ。
映画人大杉漣さんは、この映画で何を伝えたかったのか。
それを想像するのも本作の楽しみ方の一つだろう。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

日本シリーズ予想  ~ 私の予想はソフトバンクの2年連続日本一 ~ [ヨモヤ]

クライマックスシリーズ、ドラフト会議、と終了し、残るプロ野球のビッグイベントは日本シリーズである。
ワクワクドキドキの一週間が始まる。

対戦カードは、ソフトバンク対広島。
パは、開幕からずっと一位を守った西武が、クライマックスシリーズでは意外なもろさを見せて敗れ去った。
セは、ペナントでの強さそのままに、広島が巨人を寄せ付けなかった。

ソフトバンクと広島は、両チームとも近年のリーグを代表する強豪だが、日本シリーズで相まみえるのはこれが初めて。
交流戦では対戦しているが、あまり参考にはならないだろう。

ソフトバンクの今シーズンは、意外な不振だった。
貯金20の2位だから普通のチームなら十分に胸を張れる成績だが、西武に離されての2位は、球団関係者にとってもファンにとっても不本意だっただろう。
負けた原因は、怪我人が続出したことで、特に投手陣に誤算が続いたが、シーズンの終盤に立て直してきた。
また、クライマックスシリーズでは柳田の後ろを打つデスパイネに当たりが戻り、打線も厚みを取り戻した。
サファテが不在であり、内川も万全ではないなど、100%の状態ではないが、十分に戦える態勢が整ったと言える。

広島のペナントレースは盤石。
全く危なげない戦いぶりだった。
田中、菊池、丸、鈴木といった主軸が円熟味を増し、
緒方監督の落ち着いた采配も光った。

さて予想である。
両チームとも充実した戦力を誇っており、実力は五分五分と見るのが妥当だろう。
ペナントを制し、クライマックスでも力を誇示した広島が勝つべきとの意見もあるだろうが、心情と予想は別物である。

私は願望も込めてではあるが、ソフトバンク有利と見る。
日本シリーズや交流戦を見ても、パの力が上回っていることは明らかで、五分に見えるとしたらパのチームに一日の長があると考えるのが妥当だろう。
また、不完全燃焼だったペナントの分を、ここで晴らそうという気持ちが強いのもソフトバンクだと思う。

もちろん広島も、過去2年はリーグ優勝しながら日本一には届いていないから、やり返したい気持ちがあるだろうし、
今年は新井さんの引退という燃える要素もある。
それでも、総合力でソフトバンクが一枚上、と見る。

なんでも、ドラフト会議の視聴率が20%近くになり、過去最高を記録したのだそうだ。
野球人気は健在ということだろうか。
そんなときだからこそ、なおさら本物の試合を見せてほしい。
スゴイ試合、面白い試合を届けることが、ファンをさらに増やす要因になる。
日本最高峰の戦いに注目しよう。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

55歳125キロへの道程 ~ 余裕を持ってクリアしないと身体を壊すという記憶をもとに ~ [55歳125キロプロジェクト]

2017年に勝手に実施した「50歳過ぎ腰痛持ちが、120キロの速球(?)を投げるプロジェクト」は、いろいろな方の協力により、幸いにも成功裡に終了した。
MAXは123㎞であった。

年甲斐もなく達成感を覚え、新たな目標が欲しくなり、ふらふらと始めたのが「利き腕じゃない方で110キロプロジェクト」。
右利きの私が左投げに挑戦し、2018年中に80キロくらいまでに上げて、2019年に110キロを目指すという2年がかりの計画であった。
しかし、腰をはじめいろんなところが痛くなり、こちらはあえなく断念。
トホホである。
面目次第もない。

そんな状況で、性懲りもなく始めたのが、
「55歳過ぎの腰痛持ちが、125キロの速球(?)を投げるプロジェクト」
である。
左腕はあきらめ、右腕に戻して。
2020年の秋をゴールとする、再び遠大?なプロジェクト。

スケジュールとしては、
2018年冬は、筋トレに専念。
2019年春からボールを投げ始め、
 6月 90キロ
 7月 100キロ
 8月 105キロ
 9月 110キロ
 10月 115キロ
で2019年シーズンは終了。

2019年の再び冬は筋トレを行い、
 6月 100キロ
 7月 110キロ
 8月 113キロ
 9月 118キロ
 10月 125キロ
と伸ばしていく算段である。

前回の挑戦の反省は、
「120キロ投げるためには、125キロ投げられなければならない」
「疲れてもいいから、しっかりウォーミングアップ」
である。
ちゃんと身体を温めることなく、ギリギリのところで全力投球をすると身体を壊す。(実践済み)

あと丸々2年ある。
コツコツ積み上げていこうと思う。
どうせ、途中で腰痛や肘痛に見舞われると思うが、なんとか連続リタイアは避けたい。

過去の栄光映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=J_GVw4slx8o
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

映画評 「止められるか、俺たちを」 [映画評]

本作は、2012年10月に急逝された映画監督・若松孝二さんと、彼の周りに集まった若者たちの日々を描いた作品である。
「止められるか、俺たちを」とのタイトルだが、登場人物たちは猛スピードで疾走しているというより、迷い、戸惑い、焦り、困っている。
「止められるか」というより、「止まれるのか」という感じだろうか。

若松孝二さんは、ピンク映画を中心に撮りながら、若者の大きな支持を集めた伝説的映画監督。
といっても私は彼の作品をよく知らない。
だから、思い入れもない。
しかし、受け継がれた映画を作る熱情のようなものが表現されている作品ではないかと踏んだ。

若松監督の伝記的な映画かと思いきやさにあらず、若松監督のもとに集まった若者たちの青春群像劇となっている。
一座の中心にいる感はあるものの、若松さんのカリスマ性はあまり描かれない。
若松監督を演じた井浦新さんも、グイグイ出張ってくる感じではなかった。

本作の主役は、門脇麦さんが演じた女性助監督。
男でもキツイ仕事である若松監督によるピンク映画の助監督を志願して務め、いつか自分の映画を撮りたいと思っている。
しかし、どんな映画を撮りたいのかは、まだわかっていない。
燃える気持ちはあるが、宙ぶらりんな存在。
自分が信じられないでいる。

映画は、ストーリーがあるような無いような感じで進む。
若松プロによるハチャメチャな映画製作の様子が描かれ、新しい人間が入ってきたり、先輩が抜けたりする。
ずっと同じことの繰り返しのようだが、それがなぜか私には心地よく、延々と観ていられる感じだった。

主人公の女性は、実在の人物をモデルにしているらしい。
彼女の成長がつづられていくのかと思っていると、終盤に大きな破綻がある。
それはあまりにも唐突であり、うまく解釈できない。
この展開を、不親切として不快に思われる方も少なくないと思うが、私は受け入れることができた。
自分のことは自分にしかわからない。
なんだって起こり得る。

監督は、白石和彌さん。
「彼女がその名を知らない鳥たち」
「孤狼の血」
と連続で問題作を公開され、非常に注目されている監督の一人であると思う。
白石監督は、若松孝二さんに師事されていた時期があったらしく、この作品への思い入れもひとしおだっただろう。
しかし、劇中では若松監督に対する激情は、ぐっと抑えられている。

「止められるか、俺たちを」は、映画ファンなら観て損のない映画。
ピンク映画の監督だったので、そういうシーンはそれなりに出てくるが、裸が絶対にダメ、という人以外なら受け入れてもらえるのではないだろうか。
エロいというより、コミカルに描かれている。
なんでも受け入れる覚悟で、作り手の熱を受け止めよう。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

前日銀総裁の講演で思う  ~ 「金融政策に答えは無い」と考える方がトップにおられた皮肉 ~ [経済を眺める楽しみ]

前日銀総裁の白川方明さんが、日本記者クラブで記者会見をされた。
退任後、これまで発言を控えられていた白川さんだが、著書の刊行に合わせて口を開かれた。
このタイミングで発言されると、どうしても著書のコマーシャルのように思われてしまうことは避けられないが、出版社からの要請であったのだろうか?
それとも、ご本人の我慢も限界だったのだろうか?

白川さんは、日本銀行の総裁を務められた方だが、もともとは総裁になられるはずの方ではなかった。
白川さんが副総裁だった時期がねじれ国会だった時期に当たり、武藤敏郎氏、田波耕治氏のお二人の人事案が相次いで否決されたため、繰り上がりのような形で総裁になられたのである。
在任期間は、2008年の3月から2013年の3月までであり、この期間は日本株の低迷期と見事に重なる。
当然ながら、株価の低迷を日銀総裁だけの責任にするのは間違いだが、事実としてそうである。
安倍政権が誕生し、日銀総裁に黒田東彦氏が就任された後の株価の上昇は周知のとおりであり、こちらはもちろん偶然ではない。

私は、日銀総裁の役割は重い、と信じている。
なんでもできるとは思わないものの、かなりのことができるはずだと思う。
そして、中央銀行の役割の重大さは、世界中どこでも同じだろう。
しかし、白川さんの考え方は少し違うようだ。

今回の記者会見で白川さんが述べられたこととして報道されている言葉を並べてみると、こんな具合である。
「日本経済の根本的問題は急速な高齢化と人口減少であり、金融政策に答えは無い」
「金融緩和は、本質的には明日の需要を今日に持ってくる政策であり、効果は長続きしない」
「日本経済が直面している課題が金融緩和で解決すると人々が思ったとすれば、それが最大のコストだ」

こうして見ると、どうやら白川さんは金融政策には大した意味はない、と考えておられるようだ。
そうなのかもしれない。
白川さんが正しく、世界の常識が間違っているのかもしれない。
それはわからないが、一つ言えることは、白川さんは日銀総裁には向いていなかったということである。
エコノミストや学者としての優秀さとは、全く別の次元の話として。
なにしろ、金融政策に大した意味はない、と考えておられる方が金融政策をされているのだから、効き目があるわけがない。
経済がよくなるかどうかは政治の仕事であり、金融政策にできることはせいぜい時間稼ぎ、と考えておられる方が指揮をとられているのだから、組織の士気が上がるはずはない。

正直で優秀で、人間として尊敬できる方なのだと思う。
しかし、中央銀行のトップに向いていたかどうかというと全く別の話である。
改めてそれがわかった。
人事の怖さ、ねじれの危うさも改めて感じた。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

映画評 「若おかみは小学生!」 [映画評]

2018年日本映画界の最大の話題は「カメラを止めるな!」のブレイクだと思うが、そこまでの大ヒットとは行かなくても、公開後、口コミによって観客数を伸ばしている作品がいくつかある。
映画ファンとして、いい映画が正しく評価されて多くの人の目に触れるのは嬉しい。
そうした作品の一つが、アニメ映画「若おかみは小学生!」である。

「若おかみは小学生!」は、令丈ヒロ子さんによる児童文学。
累計300万部というベストセラーであり、テレビアニメ化もされた。
それを受けての映画化であり、上映館も初めからそれなりにあった。
その点は何もないところから公開された「カメラを止めるな!」とは大きく違う。
しかし、こうした展開での映画化の場合、原作やテレビで知っていた層だけに届けばいい、という作りになりがちであるから、大化けするような作品になるための難しさもある。
何もないところから作るより、かえって難しいことかもしれない。

私は、原作も未読だし、テレビアニメも未見である。
だから、正直なところ、この映画を観る気がなかったというより、公開されていたことも知らなかった。
評判を聞きつけての鑑賞であり、どうしてもハードルが高くなる。
目線を上げてしまうと反動が大きくなりがちで、ちょっと心配したが、期待にきっちり応えてくれる作品だった。
子供向けということもあってか、90分という上映時間の制約もあったそうだが、与えられた条件のなかでプロの仕事をされている。
「泣ける」
との評判だが、確かに泣けるシーンがあった。
私はなんとなく我慢してしまったが、ダーダー泣く人も少なくないだろう。

主人公は、もちろん小学生であり、旅館の若おかみとなる。
どうして小学生が若おかみとなるのか、知っている人の方が多いのかと思うが、私はそれすら知らなかったので、最初の展開に驚かされた。
ストーリーをぐしゃっとまとめると、
思いがけないことから若おかみとなった小学生が、いろいろなお客さんとのふれあいの中で少しずつ成長する物語、
である。
それほど突飛なストーリーではないが、だからこそ届きやすい。
いくつかのエピソードが積み重ねってラストにつながっていくのだが、一つ一つ、いい話だなあと思える。
ライバルを含め、悪い人が出てこないので、爽やかな気持ちで映画を観終われる。

ただ、いい映画だし、あたたかく泣けるが、同じように口コミで広がっていった他のアニメ映画「時をかける少女」や「この世界の片隅に」と比べると、そこまでのインパクトはない。
インパクトはなくても、いい映画はいいのではあるけれど。

「若おかみは小学生」は、評判どおりの泣かせる映画。
主人公である、おっこの頑張りを思わず応援したくなる。
魅力的な登場人物も多く、楽しい時間が過ごせる。
家族連れにピッタリだが、大人の鑑賞にも十分耐えるので、おひとりの鑑賞も大いにありである。
挿入歌の「ジンカンバンジージャンプ」も楽しいのだが、現時点ではネットで拾えず、それは残念。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

ソフトバンクはパの代表としてしっかり広島を倒してほしい  ~ 西武の最強打線を日本シリーズで見られないのは残念だが ~ [ヨモヤ]

パでは2004年からプレーオフ方式が採用され、大いに盛り上がった。
クライマックスシリーズが始まってからも、10年以上経った。
しかし、
「一年の成績がチャラになってしまうクライマックスシリーズは納得できない」
「これでは、優勝の意味がなくなる」
とおっしゃる方が、今でもおられる。
お気持ちはわからないでもないが、そういう前提で戦っているのだし、お客さんもそれで盛り上がっている。
今年の巨人のように、勝率が5割にも行っていないようなチームが日本シリーズに進出したらさすがに興ざめだが、そうでなければペナントレースとはある意味切り離されたイベントとして楽しめばいい。
もちろん、優勝チームが負ければ、応援している人は悔しいだろうが。

今年のパ・リーグは西武が優勝したが、2位のソフトバンクの成績も恥じるものではなかった。
西武には6.5ゲーム差つけられたものの、
82勝60敗で貯金は22もある。
ちなみに、セ・リーグをぶっちぎった広島の勝敗は、
82勝59敗であり、ソフトバンクとほとんど差がない。
圧倒的に不利な状況で戦うクライマックスシリーズを勝ち抜いたのはソフトバンクの底力であり、胸を張って日本シリーズに向かい、広島を倒してパの力を再び示してほしい。

ペナントを制した西武としては、なんとも悔しい敗戦となった。
シリーズを通して、投手が酷すぎた。
ペナントレース中から酷かったのだが、シリーズ中の酷さは度を超していた。
フォアボールを出してランナーを貯めて長打を食らうという展開の連続で、打っても打っても届かない試合が続いた。
特に、初戦をエースの菊池で落としたのが響いたが、菊池はもともとソフトバンクにはずっと勝てない投手だった。
結局、大事な試合でもそれは克服できなかった。
打線では、秋山と中村に当たりが出なかったが、それでも5試合で28点を取ったのだから、湿りっぱなしというわけでもなかった。
勝負は時の運。
今回は、ソフトバンクが運を味方にして、いい戦いをしたということだろう。

ただし、クライマックスシリーズでの弱さには課題が残った。
敗因をしっかり分析しないと、来年以降もまた繰り返される。
ちなみに、西武のクライマックスシリーズでの成績は以下のとおりである。
08年第2ステージ 〇 対日本ハム
10年第1ステージ × 対ロッテ
11年第1ステージ 〇 対日本ハム
11年第2ステージ × 対ソフトバンク
12年第1ステージ × 対ソフトバンク
13年第1ステージ × 対ロッテ
17年第1ステージ × 対楽天
18年第2ステージ × 対ソフトバンク

つまり西武はクライマックスシリーズでは2勝6敗と惨敗しているのである。
2勝はいずれも日本ハム相手であり、他のチームには全敗している。
ここまで負け続けるのだから、短期決戦での戦い方は見直す必要があると言えるだろう。

試合後の挨拶で、辻監督が涙を流す映像を見て、こちらも胸が詰まった。
あの姿を忘れず、選手は来年に向けて一層発奮してもらいたい。

しかし、クライマックスシリーズで負けたとは言え、ペナントレースでの見事な戦いぶりが消えてしまうわけではない。
2018年の西武ライオンズは、史上最強とも思える打線を前面に出し、常勝ソフトバンクを打ち負かした。
素晴らしいシーズンだった。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事