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映画評 「his」 [映画評]

「愛がなんだ」のヒットもあり、今や「恋愛映画の騎手」と呼ばれることも多い今泉力哉監督の新作。
今回はゲイのカップルが主役だが、
センセーショナルにではなく、
いたずらに美しくにでもなく、
きちんと丁寧に撮られている。

LGBTがテーマになると、どうしても性の問題を主に観てしまうが、
本作はいろいろな気配りがなされていて、
地に足がついた感じがする。

物語は、昔別れたゲイの恋人が、
自分の娘を連れてふらっと現れたことから始まる。
その恋人は一緒に暮らそうと申し出る。
どうして急に現れたのか、
どうして一緒に暮らしたいと言い出したのか、
そこのところがあまり腑に落ちない。
そうならないと物語が始まらないから、映画的にはそうするしかないのだが、
どうにもしっくり来ない。
いい映画だが、このとっかかりが少し残念。

本作は淡々としながらも、様々な展開を見せる。
子供の親権をめぐる裁判劇もあり、
エンタテインメントとしても楽しめる。

ゲイのカップルを演じるのは宮沢氷魚さんと藤原季節さん。
二人とも自然ないい演技だった。
松本若菜さんが娘の母役。
相変わらずお綺麗で、女優さんらしい女優さんである。
こうした小品には欠かせない存在となっている若手女優の松本穂香さんが、きっちりと存在感を出していた。
根岸季衣さんも、しょっちゅうお見掛けするが、ピリッと締めておられる。
子役の女の子もよかった。

映画の本筋とは全く関係ないが、
たびたび出てきた犬がやたらと可愛かった。
犬好きの人にはたまらない。
犬が出てくるシーン、必見である。

「his」は、しっとり観られる小品。
LGBT云々に抜きに、映画としてじっくり鑑賞できる。

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