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映画評 「劇場」 [映画評]

年明けくらいからこの映画の予告編が流れるようになった。
又吉さんの原作で行定さんが監督、
舞台がテーマで山崎賢人くんと松岡茉優さんが共演。
予告編の雰囲気も私好みで、是非観たいと思った。

しかし、そのあと襲ったコロナ禍で公開が延期になった。
とは言え、山崎くんと松岡さんの共演なのだからお蔵入りはありえないと思っていたが、
なんやかやの事情があり、予定どおりの公開ができなくなったらしい。
そこで、公開館数が絞られる代わり、
劇場公開と同時にアマゾン・プライム・ビデオで世界配信することで、
なんとか収益を確保することができるようになったらしい。

結果、ごく限られた小さな映画館での公開となったが、映画の雰囲気は小劇場向き。
シネコンで眺めるより、狭い劇場のちょっと小ぶりなスクリーンで、
ちょっととんがって観るのにちょうどいい。
吉祥寺やら高円寺やら下北沢やらの小さな箱で。

劇団を主宰する青年役を山崎くんが演じ、
ひょんなことで出会い、彼を支える女の子を松岡さんが演じる。
山崎くん演じる役は、生活者としては最低の男なのだが、表現者としてはあり得る存在。
いや、しかし、今では希少価値か。
松岡さん演じる役は、この男を無条件で受け入れる。
こちらも、今の世の中では希少価値か。

客観的に見ると、
そして男の心情から見ても、
男はひどいことをし続けているのだが、
それが女を不幸にしているとは限らない。
かなり昭和な心象風景かもしれないが、人の気持ちがそう変わるものでもないと思う。
映画のコピーに、
「生涯忘れられない恋」
とあるが、確かにそうだと思う。
ちょっとうらやましいな、と感じたりもして。

山崎くんは、才能と戦う表現者を懸命に演じていた。
松岡さんは、変幻自在。見事だった。

「劇場」は、純文学系映画。
胸の奥にグサッと刺さる。
映画好き、舞台好きの人にはきっと届くと思う。
大感動、という作品ではないし、大傑作でもないが、
この映画の空気は、何年か経っても覚えている気がする。

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