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「伝えたい映画大賞」 その2:作品賞部門 [映画評]

各種映画賞に首を傾げさせられ、
だったら自分たちで「伝えたい」と願う映画を選ぼう、
という思いで始めた「伝えたい映画大賞」も今年で2回目。
ちなみに去年の結果は、
大賞「洗骨」    監督・照屋年之(ガレッジセールゴリ)
2位 「岬の兄妹」  監督・片山慎三
3位 「愛がなんだ」 監督・今泉力也
であった。

2020年の作品賞候補として名前が挙がったのは、
「糸」
「喜劇 愛妻物語」
「ミッドナイトスワン」
「37セカンズ」
「朝が来る」
「脳天パラダイス」
「君が世界のはじまり」
「ビューティフルドリーマー」
「とんかつDJアゲ太郎」
「一度死んでみた」
「風の電話」
「浅田家!」
「ラストレター」
「アルプススタンドのはしの方」
「ソワレ」
「グラフィティ・グラフィティ」
「はりぼて」
「どこへ出しても恥ずかしい人」
「本気のしるし」
「星の子」
といった映画たち。
硬軟織り交ざるバラエティに富んだラインナップである。

まずは、Facebook上で評価が高かったことから、
「アルプススタンドのはしの方」問題を議論した。
本作については、脚本のよさや若手俳優の演技に評価が集まるも、
映画としてのめり込ませてもらえないものがあったのは確かであり、大賞には推せないとの意見で一致した。

続いて、2020年の映画界を振り返るうえで避けては通れない、
「鬼滅の刃」問題について意見交換。
テレビシリーズの延長線上として見る分には一定の満足度があるものの、
映画単体として観た場合、そこまでの評価はできないという意見が大勢を占めた。

「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」
「はりぼて」
「なぜ君は総理大臣になれないのか」
など、ドキュメンタリーに興味深い作品が並んだ年であったことも話題に上った。

さて、大賞の選考である。

私は、ふくだももこ監督の「君が世界のはじまり」を推し、その魅力を語ったが、
世の中的にもあまり評価されておらず、ここでも票を集めることはできなかった。
残念。
それでも、大好きな映画であることに変わりはない。

河瀨直美監督の「朝が来る」については、脚本・演出の素晴らしさに加え、
永作博美さん、蒔田彩珠さんといった俳優陣の頑張りにも評価が集まった。
浅田美代子さんは、師匠?の樹木希林さんに似てきたとの意見も出た。
しかし、大賞となると、少し違うのかと。

諏訪敦彦監督の「風の電話」は、東日本大震災から10年が経過しようとする時期に撮られるべくして撮られた佳作。
モトーラ世理奈さんの演技も実に印象的であった。
良心的に作られた映画がしっかり評価されるのは素敵なことである。

数ある作品の中から、2020年伝えたい映画大賞に選んだのは、
HIKARI監督の「37セカンズ」。
女性監督の活躍が目立った年のナンバーワンはやはり女性監督作品だった。
脳性麻痺を持つ女性が主人公で、演じた佳山明さんも実際に同じ障害を持っておられる。
しかし、ただリアルなだけでなく、エンタテインメントとしてもしっかり成立させている。
障害者の性、という難しいテーマにもド真正面から斬り込んでいて、監督の表現者としての矜持がひしひしと伝わってくる。
終盤、「あら?」という展開もあるのだが、「伝えたい」という気持ちになるという点では、この映画が一番だった。

続いて、2位、3位の選考。
まず、最も議論した「アルプススタンドのはしの方」を3位に決めた。
ああでもない、こうでもない、と議論させるというのはそれだけ作品に力があるということでもある。

残るは2位。
一瞬、本広克行監督の「ビューティフルドリーマー」の名前が挙がり、この映画が大好きな私は色めき立ったのだが、さすがにないだろうと。
さすがにないか。
でも、名前が出ただけで嬉しかった。

「喜劇 愛妻物語」は、水川あさみさんに女優賞を進呈させていただいたし、
「ミッドナイトスワン」は、日本アカデミー賞で評価された。
そんななか、とてもいい作品であるにも関わらず、各種の映画祭でなぜかあまり名前が挙がらなかったのが、
瀬々敬久監督の「糸」である。
あまり期待せずに観に行った私は、「恐れ入りました」と頭を下げた記憶がある。
映画的なスケールがあり、いい脚本、いい演出、いい演技、
楽しめて、最後まで観る側の気持ちが途切れず、クライマックスでしっかり泣ける。
見事だった。

結果、「2020年伝えたい映画大賞」は、
大賞 「37セカンズ」 HIKARI監督
2位 「糸」 瀬々敬久監督
3位 「アルプススタンドのはしの方」 城定秀夫監督
と決定した。

今年は、審査会場にギャラリーを招いた。
映画賞の審査をオープンにして、さらにエンタメ化できないかという試みである。
どうだっただろうか。

これからもいい日本映画が撮られますように。
いい映画がきちんと評価されますように。
心から祈る。
映画がある日常が守られますように。

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