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映画評 「迷子になった拳」 [映画評]

本作は、ミャンマーの伝統格闘技「ラウェイ」に関わる選手や関係者の姿を追ったドキュメンタリー。
ラウェイは、「地上で最も過激な格闘技」と言われることもある。
拳にはグローブではなくバンテージのみを巻き、
頭突きも肘も投げ技も認められる。
ミャンマー国内で行われる際には、
フリーノックダウン制でダウンカウントを取らず、片方が負けを認めるか意識が戻らなくなるまで試合が続行されるという。
判定はなく、どれだけ一方的にやられていても、試合時間中戦い続ければ引き分けとなり、
勇者として認められる。
スポーツという空気はない。

日本での知名度は低く、危険すぎることもあってか、有力な選手が集まってくることはない。
逆に、ワケありの選手がその不思議な魅力に引き込まれてやってくる感じである。
なお、タイトルの「迷子になった拳」は、日本でラウェイを主宰する団体が、
分裂したり対立したりしてしまった経緯を指しているようだ。
特定の選手の拳が迷子になる、というよりも。

ドキュメンタリーであり、出てくる人たちは当然実在の方々なのだが、
皆、なんとも不思議な面々である。
ひとくせもふたくせもある、という感じではなく、純粋に変わっている。
そして、この映画自体、決まった方向に進んでいくというより、フラフラフラフラしている。
宣伝では
「人はなぜ闘うのか」
といったことがテーマになっているように見せているが、この作品を観てもそんなことはちっとも見えてこないし、
見せようともしていない感じである。

私は格闘技ファンであり、
自分にないものを求めるがゆえか、奇想天外な行動をする人を見るのが好きで、
この映画もそれなりに楽しんだ。
しかし、優れたドキュメンタリー作品に触れるつもりで本作を観ると、肩すかしになりそうだ。
映画自体が迷子になっているあたりが、ある意味リアルではあるが。

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