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もう内部留保を目の敵にしないで [診断士的経済アプローチ]

去年まで、企業の内部留保を目の敵のように言う政治家の方が多かった。
「ため込まずに人件費に回せ」
「内部留保をためるのは知恵がない証拠」
「内部留保に課税せよ」
といった具合である。
「内部留保を吐き出させよ」
といった意見もあった。

内部留保は、売上から人件費などの経費を差し引いて生み出した利益から、税金を払ったのちに生じる。
企業としては、しっかり税金を払い、経営判断のうえで内部留保としているのに、
それをとがめられてはたまらないだろう。

そもそも企業の内部留保を減らすためには、企業を赤字にする必要がある。
赤字になってしまえば、人件費は当然削減の対象だろう。
そうなっていいはずがない。
内部留保を取り上げようとされていた方は、何をしたかったのだろう。

さて、2019年度法人企業統計調査で企業の内部留保が8年連続過去最高となったらしい。
今から思えば平和だった去年の数字である。
これを受けて麻生財務相は、
「内部留保がやたら厚くなけりゃ今回のコロナ対応はもっときつかったろうな。財務大臣の口車に乗って設備投資しなくてよかったと思っている経営者もいるんじゃないか」
「結果論だが、内部留保が厚かったところの方が、コロナの騒動に耐えるだけの企業体力があったってことになる。そこはちょっとあれだが……。もう少し設備投資や給与に回ってしかるべきではないか」
とおっしゃったらしい。

麻生大臣らしい表現で、実にわかりやすい。
ただ、内部留保が多かったのは結果論ではない。
企業としては、まさかに備えて一定のたくわえを持っているのであり、
2020年にそのまさかが来たことはたまたまではない。

さすがに、今年や来年には内部留保撲滅論は出ないだろうが、
ほとぼりが冷めたら、まだ言い出す人がおられるかもしれない。
「内部留保を吐き出させろ」
と。
しかし、今回のことを教訓に、内部留保を叩くのはもうおやめいただきたい。
筋がいいとは言えないし、
企業人からすれば、よくおわかりになっておられないように映ってしまうからである。

今思えば、内部留保を叩くとは、牧歌的な時代があったものだ。
去年のことだが。

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