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書評 「ローマ法王に米を食べさせた男」 [読書記録]

高野誠鮮さんの「ローマ法王に米を食べさせた男」を読んだ。
スーパー公務員として、メディアで紹介されることも多い高野さん。
かねてからすごい人だなあとは思っていたが、テレビなどで伝えられるのはほんの断片的なこと。
こうして一冊の本にまとめられたものを読むと、そのパワーに改めて驚嘆する。

高野さんは、現役の羽咋市役所の職員である。
お坊さんであり、もとテレビマンという経歴から、普通の地方公務員とはそもそもかなり毛色が違うことは確かだが、公務員とかなんとかいう枠を取っ払って、一職業人として、半端ないレベルの方である。

一番驚かされるのは、行動力。
「ローマ法王に米を食べさせた」というのは、象徴的な事例ではあるが、これだけならアイデア一発勝負。
高野さんの真骨頂は、こんなものではない。
その、ダメ元精神には、頭が下がりつつ、もう笑ってしまう。
考えてみれば、世界的な有名人に何かお願いをして断られたとしても、それはむしろ当然のことで、失うものなどない。
だから、ほかの人もどんどんやればいいのだが、なかなかそうはいかない。
「どうせ無理」とか、ひとつも返事がなかったらみっともないとか、マイナスのことばかり考えてしまう。
高野さんのバイタリティを見習わなければ。

さらにすごいのは、その粘り強さ。
どんなに高野さんがすごい人でも、一人でできることは限られている。
また、公務員である以上、いろいろな人を巻き込んで、地域の役に立っていかなければならない。
高野さんは、それまでの延長線上でものを考えるのではなく、どうしたらもっと注目してもらえるか、どうしたらもっといい街にできるかと、突き詰めていかれる。
周りからは突飛な思い付きに見えることもあるだろうが、底にある信念は強い。
だから、はじめ受け入れられなくても、あきらめずに交渉できる。

普通の公務員なら、住民の声を聴いて、反対の声が圧倒的だったら、そこでもう終了になってしまう。
それが住民の声を聴くということのように思ってしまうから。
しかし、これでは、住民の声を聴くことが目的化してしまっている。
住民のためになることをしようと思えば、最初の反発でひっこめてはいけないのが正しい姿であろう。
ただ、それはやさしいことではない。
摩擦も起こるだろうし、離反さえ招くかも知れない。
それでも、信じたことを粘り強くやり通す。
その高野さんの信念には、頭が下がるというか、驚かされてしまう。

強い刺激を与えてくれる一冊である。
誰しもが高野さんのようにできるわけではないが、高野さんのような方がおられることを知っておくことは、非常に意味がある。
すごい人が世の中にはいる。
ほんの少しでも近づいていければと思う。
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