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成瀬が天下を取った [読書記録]

全国の書店員が「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ「本屋大賞」に、
「成瀬は天下を取りにいく」が選ばれた。
「成瀬」については、個人的な思い入れも深く、
本屋大賞にまで登り詰めたことに感慨を覚えた。

「成瀬は天下を取りにいく」の舞台は、滋賀県大津市。
滋賀県出身者としてはそそられた。
そして、最初のエピソードが「西武大津店」の閉店をめぐるもの。
主人公の成瀬あかりは、タイトルどおりに我が道を行く行動力を見せ、
それが周りを引き込んでいく。
しかし、天下を取る、といってもそんな大それたことをするわけではない。
西武のユニフォームを着てテレビに映り込む、とか、
友達とM-1の予選に出る、とか、そんな。
それがいい。

私がこの本を読んだのは去年の春。
読み終わった瞬間に思ったのは、
「これで西武大津店は永遠の命を持った」
ということだった。

日本中で、いろいろなお店が閉店していく。
それは避けられないことであり、仕方がないことである。
そしてどんなに愛された店であっても、時の流れによってその記憶は風化していく。
それも仕方がないことである。
しかし「西武大津店」は、成瀬によって生きながらえることができると思った。
成瀬が読み継がれていく限り、「西武大津店」の記憶も引き継がれる。
永遠に。

忘れたくないものがあるのなら、それを書いて伝えればいい。
自分で書けないのなら、誰かに書いてもらえばいい。
思いを持つ一人ひとりが書いて、のちにつなげればいい。
成瀬をヒントに立ち上げた企画に、素敵な思いが集まった。

成瀬の旅はまだまだ続きそうだ。
こちらも立ち止まっていないで追っかけていかないと。

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