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「通訳案内士」有資格者としては踏んだり蹴ったり [お役所内案内士]

これまでの「通訳案内士」制度下においては、
観光庁が主催する試験に合格し、
都道府県知事の認可を受けた人だけが通訳案内士を名乗り、
訪日外国人旅行者に対して有償で案内業務をおこなってきた。
つまり、通訳案内士以外の人は、有償では外国人観光客をガイドできなかったのである。

そのため、きちんと資格を持って外国人観光客をもてなしたい人、語学力を生業に活かしたい人などが、通訳案内士試験に挑戦してきた。
通訳案内士資格を取得したところで、一定の収入が保証されるわけでもなんでもないことは百も承知の上で、コツコツと勉強を積み重ね、試験に臨まれてきたのだと思う。

しかし、政府は、訪日外国人旅行者が急増している状況から、案内士だけでは対応が難しくなると考えた。
そこで、案内士の業務独占を廃止し、無資格者でも有償ガイドを行えるよう制度を変える方向で準備が進められている。
通訳案内士の有資格者としては、試験にかけた苦労が水の泡になってしまった感を持つ方が多いだろう。
また、ずっと案内士としてガイドをされてきた方としては、誰でもできると言われてしまうと、それでガイドと言えるのだろうかと、疑問も持たれているだろう。
それでも、訪日外国人観光客を2,000万人から4,000万人に増やそうとしているなかでは、やむを得ない措置なのかとあきらめようとしてきた。

だが、既存有資格者の受難はそれだけではない。
「通訳案内士」に更新制が導入され、更新時に研修を受けるよう義務付けられるというのだ。
正直なところ、更新制がないことはこの資格の魅力の一つであり、それもあって試験を受けた人もおられると思うが、それももうすぐ終わるようだ。
更新時には、研修を受けたりする必要があるようだが、きっと受講料や更新手数料が必要となるのだろう。

無資格でガイドを始める人には、当然更新制などない。
更新すべき資格がないのだから当然である。
つまり、
資格がなくても有償で外国人観光客のガイドができ、
無資格でガイドされる方たちには能力の証明などは全く求められない一方、
資格を持っている人はお金と時間をかけて一定期間ごとに資格を更新しなければならない、
という制度になるというのである。
こうなるとさすがに、通訳案内士資格ってなんなんだ、という気がしてしまう。

それでも、しっかり国からのお墨付きをもらってガイドをしたいから、資格を取得したいと考える人も少なくないだろう。
そして、折角取得した資格であるから、更新していこうと考える方も少なくないだろう。
それが自然な感情だとは思うが、割り切れない感情は残るはずだ。
「私は、なんのために、資格にこだわっているのかしらん」と。

外国人観光客のさらなる増加が見込まれるなか、時代の変化に合わせて通訳案内士資格についても見直しを進めていく必要があるのは確かである。
しかし、今回の見直しの内容が、既存の有資格者にとっては踏んだり蹴ったりであることも確かである。

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