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映画評 「辰巳」 [映画評]

2016年公開の長編デビュー作「ケンとカズ」で注目を集めた小路紘史監督作品、
ということだが、その作品は未見。
ジャパニーズノワール、というジャンルらしいが、あまり聞かない言葉。
ノワールとは闇社会や暗黒面を描いた作品ということになるだろうから、
日本の闇の部分を描く映画ということになろうか。

本作は自主制作で作り上げたとのことだが、完成度は高い。
映像に安っぽさはまるで感じられないし、
最初から最後まで緊張感が継続する。
途中から萎える映画がほとんどであるなか、作品の持つ力は称賛に値する。
俳優陣の健闘も見事。
出てくる面々がほぼすべて「ヤバい」奴らなのだが、
陳腐に陥らせずに描き切っている。

ずっと画面に集中させてもらえる作品なのだが、
惜しむらくはもう少し主人公の男を掘り下げてほしかった。
なくしてしまった弟と生意気な娘を重ね合わせているのはわかるが、
男の背景がわからないので、今一つ乗り切れなかった面がある。

主人公の辰巳を遠藤雄弥さんが演じる。
この映画を最後まで引っ張り切る熱演だった。
破天荒な娘役の森田想さんも見事。
難しい役を、説得力を持たせて演じた。
後藤剛範さんはド迫力。

「辰巳」は力作。
バイオレンス系のシーンも少なくないので、
そっちが苦手という人にはおススメできないが、
映画ファンの方はぜひご覧いただきたい。

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