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映画評 「あの頃、君を追いかけた」 [映画評]

本作の予告編を何度か見たが、正直ピンと来なかった。
乃木坂の齋藤飛鳥さんがヒロインというが、彼女のこともよく知らないし、この映画は見送るつもりだった。
しかし、各種の映画評で高評価。
これは掘り出し物かも知れないと、急遽参戦した。

のっけから、青春の甘酸っぱさは存分に感じさせてもらったが、あまりにもツッコミどころが多く、これははめられたか、と思った。
だが、終わりに近づくにつれ、切なさが膨れ上がり、最後はわっしとつかまれた。
「なんだ、これ?」
と思う人も多い作品かも知れないが、私はやられた。
思い出すと、胸が締め付けられる。

本作は、同名の台湾映画(2011年)のリメーク。
元の作品を観ていないが、設定やらなにやら、かなり寄せているらしい。
そのせいなのか、おかしなシーンがいくつもある。
例えば、卒業式の後に入試があったり、
その入試の季節はどうやら夏のようだったり、
デートの場所がどうやら台湾のようであったり。

これらは、ツッコミどころというレベルを超えて、観るものを混乱させる大きな傷なのだが、ひょっとしてこうしたへんてこなシーンは、最後の場面で主人公が言っている別の世界を描いているのだとしたら合点がいく。
ネタばれになるのでこれ以上は書かないが、そう思って振り返ると、なにやら一層切なくなる。
YouTubeでオリジナル版を見ると、似たようなシーンがあり、おそらく本家に合わせているだけなのだろう。
しかし、あえてこうしたちょっと変な設定を挟むことで、観る側の空想を刺激しているとしたらどうだろう。
監督や脚本家が、本家に寄せているふりをしながら、観る側にこっそり仕掛けているのだとしたらどうだろう。
私の解釈は深読みし過ぎの無理筋で、製作者側に甘過ぎる気もするが、観る側の解釈でいかようにもとれるのが映画のいいところである。
また、そういう深読みをしたくなるような力が本作にはあった。

本作には、タイムスリップもなければ、花火大会も、学園祭もない。
登場人物は色恋だけではなく、勉強のこと、将来のこと、家のことも考えている。
私たちと同じように。
だからこそ、引き付けられる。
もっとこうすれば、もっとああすれば、という点はいくつもあるのだが、山とある欠点を帳消しにする何かがこの映画にはあった。

主演は、山田裕貴くん。
ぶっ飛んだ役を突き抜けた演技でやり遂げた。
齋藤飛鳥さん目当てのお客さんが多いだろうが、映画に引き込めたとしたら山田くんの力が大きい。
共演は、その齋藤飛鳥さん。
先に書いたようによく知らなかったが、現在人気絶頂の乃木坂46のなかでも、上位にランクする人気とのことである。
演技がうまいかどうかはともかく、この役にはピタッとはまっていた。
山田くんの幼馴染役に、売れっ子の松本穂香さん。
彼女の使い方はちょっともったいなかった。

あの時ああ言っていたら、あのときああしていたら、
全く違った世界になっていたかもしれない、と思うことはないだろうか。
互いに、好きで好きでたまらないのになぜか結ばれないことがあることを、どこかで悟っていたりはしないだろうか。
「あの頃、君を追いかけた」を観ると、そんな胸痛い思いが湧いてくる。
苦しくなる。
好き嫌いも、
評価も、
大きく分かれる作品だと思う。
完璧からはほど遠い。
しかし、私にはとてもいとおしい映画になった。
いろんなシーンを思い出して、年甲斐もなくキュンとしている。

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