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映画評 「いのちの停車場」 [映画評]

観る映画を選ぶとき、どんな基準があるだろう。
好きな俳優さんが出ているから、
原作が好きだから、
といった答えが多いだろうか。
私の場合、手当たり次第に観ている感じなので選んではいないが、
楽しみにする基準はある。
それはやはり監督さんである。
過去にいい作品を作られた監督さんの映画は楽しみになる。

本作は、吉永小百合さんと広瀬すずさんの共演が話題だが、
成島出さんの監督作品というところに魅かれた。
「八日目の蟬」が実に印象的だったし、
ちと古いが「フライ,ダディ,フライ」は楽しかった。
本作は、在宅医療をテーマにしていて重い作品となるだろうが、
成島監督なら上手に料理されることと期待した。

最初のシーンは意外なもの。
派手なアクションから始まり、さすがにメジャー系の作品は金かけるなあ、と妙な感心をする。
そこからの流れは強引でやや陳腐だが、短い時間で物語を展開させるためにはやむを得ないと飲み込む。
映画が転がり始めると、その先はエピソードの詰め合わせ。
泣かせる設定が次々に出てくるのだが、どれも既視感満載である。
それぞれ心震える瞬間がないわけでもないのだが、
ブツ切れで、ありがちで、気持ちを入り込ませるには至らない。

そして、ラストに向かっていくにつれ、
さらにアラアラ感は募り、最後のシーンでピークに。
宙ぶらりんなままエンドロールが流れるに至って、
「なんだそれ?」とつい突っ込んでしまった。

在宅医療に関しての問題提起や死に際の描き方としては、
この冬に公開された「痛くない死に方」の方がはるかによかった。
本作は、吉永さん演じる女医さんの人生見つめ直しの面も、
広瀬すずさんの成長物語の面も、
どれも中途半端。
いい作品はなかなか生まれないものである。

よかった点を探すと、金沢の街が美しく撮られていたこと。
季節ごとの風景も素敵で、
旅したくなったし、住みたくなった。

出演は、吉永小百合さん、広瀬すずさんのほか、
西田敏行さん、松坂桃李さん、
南野陽子さん、伊勢谷友介さん、柳葉敏郎さん、小池栄子さん、
伊勢谷友介さん、石田ゆり子さんといった豪華な面々。
しかし、脚本・演出がほにゃほにゃで、ほとんど活かされていない。
印象的だったのは子役の佐々木みゆさんくらい。

「いのちの停車場」は、社会派にはなり切れず、物語も強くない、という残念な作品。
吉永さんのファンにも勧めきれないが、
金沢という街のファンの方はどうぞ。

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