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書評 「怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ」 [読書記録]

井上尚弥が、日本ボクシング界が生んだ史上最高のボクサーであることは、おそらく異論がないだろう。
ここまで25戦全勝、22KO勝ち。
現WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者。
元世界バンタム級4団体統一王者。
WBSSバンタム級王者。
元WBC世界ライトフライ級王者。
元WBO世界スーパーフライ級王者。
世界4階級制覇王者。
さらに、日本人初のパウンド・フォー・パウンド・ランキング第1位獲得者でもある。

しかし、井上の強さはそうした記録だけで語れるものではない。
本作「怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ」を書いた森合正範さんは、
どうしたら井上の強さをあますところなく伝えられるかと悩み、
一つの方法として、闘った相手に語ってもらうことを思いついた。
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登場するのは、
はじめての日本人対決となった佐野友樹さんをはじめ、
フルラウンド闘い、その後世界王者になった田口良一さん、
初の世界タイトル獲得時の相手であったアドリアン・エルナンデスさん、
世界に衝撃を与えた一戦となったオマール・ナルバエスさん、
見ていて少し切なくなった新旧世界王者対決の河野公平さん、
そして、ノニト・ドネアさん、
といった面々である。

井上と闘う理由は、それぞれの選手で違う。
井上が強過ぎるがゆえに対戦を避ける選手が続出するなか、
決死の覚悟で受けて立つ者もいれば、
世界的にはそれほど知られていなかった時点では軽い気持ちで受けた者もいる。
ただ、井上と闘ったことを誇りに感じていることは、みな共通していた。

井上の強さは、
そのパワーやパンチ力に焦点が当たりがちだと思う。
ガードの上から吹っ飛ばしてみたり、
かすっただけで倒してみたり、
といったシーンが目に焼き付いているので、そうした印象になる。
しかし闘った選手たちは、パワーやパンチ力を井上の強さの中心とはとらえていないようだ。
拳を交えた者だけがわかるのだろう、
試合に臨むまでの練習量、
瞬間的な調整力、
闘いにおいてもクレバーさ、
などが井上の強さを支えているようだ。
パンチが強いから強い、
のではなく、
総合的に強いのが井上とのとらえ方である。

井上に向き合ったボクサーたちから、
相手が強いからこそ闘いたい、
という声が出ていた。
負けるかも、とか、
無事にリングを下りれないかも、
といった気持ちもないではないだろう。
しかし、それ以上に、強い相手と闘うことに喜びを感じている選手がいる。
そうした勇敢な選手と向き合うことで、井上の強さも磨かれていく。

井上はどこまで行くのか。
私たちが見ているのは、まだ途中経過に過ぎないのかもしれない。

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