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映画評「バケモノの子」 [映画評]

2006年の「時をかける少女」以来、
2009年「サマーウォーズ」
2012年「おおかみこどもの雨と雪」
そして2015年の本作「バケモノの子」
と、細田守監督は、3年に1回の割合で新作を発表されている。
待ち遠しい3年間だが、上質なものを作り続けるためには、必要なインターバルなのだと思う。
ただ、これだけ待たされると、期待値は高まる。
まあまあの作品では、いい映画を観た、という気にはなれない。
細田作品に求められるのは、年間最高レベルの作品である。
それは厳しいことであり、幸せなことでもあるだろう。

さて、もし「時かけ」と「サマーウォーズ」のどちらかを選べ、と言われたら、えらく悩むだろう。
どちらも素晴らしい作品であり、それぞれの良さは別のところにあるから。
「時かけ」と「おおかみこどもの雨と雪」のどちらかを選べ、と言われたら、何の躊躇もなく「時かけ」を選ぶ。
では、「おおかみ」と「バケモノの子」のどちらかを選べ、と言われたらどうか。
私は、「おおかみ」の方を選ぶだろう。
細田作品の中での今作の位置づけは、そんな感じである。
途中で笑ってしまうような傑作ではなかった。
プレッシャーをはねのけて、素晴らしい作品を作られた、としみじみ感慨に浸れる作品ではなかった。

もちろん、細田監督が作られているのだから、悪い作品ではない。
「おおかみ」では母子の関係が描かれていたが、今作では父子の関係が描かれ、そのもどかしさと温かさに共感した。
勇気が出る場面もある。
人間の抱える「闇」について考えさせられもする。
格闘シーンをはじめ、見せ場もふんだんにある。
しかし、なんというのか、もう一つ胸に届かない。
見ながら、「長いな」とさえ感じてしまった。

俳優陣は、きちんと仕事をこなしておられた。
役所広司さんはさすがの貫禄であったし、宮崎あおいさん、染谷将太さんも、違和感なかった。
リリー・フランキーさん、大泉洋さんのお二人はいいコンビぶりだった。
広瀬すずさんがヒロインを演じるのはちょっと心配だったのだが、問題なかった。
作品の問題は、俳優陣ではなかった。

細田監督の次回作は、また3年後ということになるのだろうか。
今作で無敵の進撃は止まった気がするが、これを糧に、またいい作品を作っていただきたい。
最大級の期待をしながら、3年間待とう。

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