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情けない太宰もいい [ヨモヤ]

太宰治と言えば、文豪の中の文豪のような存在である。
個人的な嗜好も込めて勝手に選ぶと、
夏目漱石、森鴎外、川端康成、芥川龍之介、三島由紀夫らに並び称される存在であろう。
今年芥川賞を受賞した又吉さんをはじめとして、熱烈なファンも多い。

そんな太宰の魅力の一つは、人間臭さであると思う。
処女短編集に「晩年」というタイトルをつけるような斜に構えたところがありつつ、他者からの評価にも非常に敏感であった。
ここで発見された作家の佐藤春夫に宛てた書簡3通も、太宰の「情けない」部分が出ていて興味深い。

書簡は、佐藤春夫の親族宅に保管されていたという。
今頃になって発見されたと言うのも面白い。
佐藤は、実名小説「芥川賞」のなかで、今回発見された手紙の一文を引用していたが、文面があまりにも素のままで、現物も見つかっていなかったので、佐藤の創作ではないかとも見られていた。
それが今回裏付けられたことになる。

3通のうちの1つは、4メートル超!の和紙の巻紙に毛筆でしたためられたものであるという。
その中で太宰は、
「芥川賞は、この一年、私を引きずり廻し、私の生活のほとんど全部を覆つてしまひました」
「第二回の芥川賞は、私に下さいまするやう、伏して懇願申しあげます。私は、きつと、佳い作家に成れます。御恩は忘却いたしませぬ」
と佐藤にすがっている。
関西流に言えば、「必死のパッチ」である。

太宰は、賞に拘泥し、目先の名誉と賞金にすがっている。
そのために、選考委員に泣きついている。
幻滅はしない。
太宰はそれでなくっちゃあ、という気さえする。
人間は、人間らしくていい。

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