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損失が出たときだけ騒ぐのではフェアとは言えない ~年金積立金の損失をどうとらえるか~ [診断士的経済アプローチ]

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015年度に5兆数千億円の運用損失を出したようだ。
損失を出すのは5年ぶりとのことである。

GPIFによる運用は、私たち一人ひとりの将来の年金額に跳ね返ってくる話であり、損失が出るのは困りものである。
しかし、年金の運用は典型的な長期運用であり、単年度での結果に一喜一憂すべきでないことは言うまでもない。

現在、GPIFでは、年金積立金約140兆円を運用している。
運用の割合については、14年10月に資産の構成割合を変更し、24%だった株式比率を50%にまで引き上げた経緯がある。
これについて、
「安全性を第一に考えるべき年金をリスク資産である株式に投資してどうするのだ」
との批判がある。
ただし、世界最大規模の公的年金運用基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)も50%以上株式に投資しており、あり得ないことではない。

実際、
2015年度は5兆円の損失だったが、
12〜14年度は計約37兆円の収益を上げていた。
今回の5兆円の損失を批判する人たちは、差し引き32兆円の黒字をどう評価しているのだろう。
プラスはたまたまに過ぎないから無視しておいて、
マイナスの時は徹底的に叩く、
ということなのだろうか。
だとすると、ちょっとフェアではないように感じる。

問題は、2015年度単年の赤字より、今後どうなるかということである。
債権の利回りは世界的に低下しており、ここで収益を確保するのは難しい。
株式も、今年度は昨年度以上に軟調な展開となっており、2年連続の損失もありえる。
もちろん、2年連続で損失が出たとしても、それで直ちに株式運用がおかしいということにはならないが、不安が大きくなるのは事実である。

高齢化が進む中、運用益をいかにして確保していくかという問題は、年金財政を考えるうえで非常に重要である。
短い期間の成績で一喜一憂するばかりでなく、
責任の追及に躍起になるばかりでなく、
よりよい仕組みづくりを進めていきたいものである。

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