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映画評 「疾風ロンド」 [映画評]

「疾風ロンド」の前に観た映画が、今大評判のアニメ映画「この世界の片隅に」であった。
「この世界の片隅に」は、多くの人にとって「人生の一本」になりうる傑作だと思う。
一方の「疾風ロンド」は、「毎年の何百本」のなかの一作。
比較しては気の毒とは思うが、直近に観た作品だけに、つい。
両者には同じ「映画」というくくりで比較することが無意味に感じられるほどのクオリティの違いがあった。
まあ、この作品はこの作品として。

約2時間の上映中、退屈したかというとそうでもなかった。
早く終わることだけを願わされる映画もないではないから、その意味ではありがたい。
しかし、まさかこんな浅くないよね、何かあるよね、という思いでずっと見続け、そのまま終わってしまったことは否めない。
いろいろどんでん返しがあるのだが、びっくりするというより、やれやれと呆れる感じである。
「それはないよなあ」というトホホ感。

もちろん、コメディである。
だから、観る側もシリアスさを求めてはいない。
しかし、コメディだからなんでもいい、ということにはならない。
むしろ、人を笑わせようと思えば、周到な準備や仕掛けが必要である。
本作では、それがはまっているようにはとても思えない。

脚本が目を覆う酷さなのだが、監督さんが脚本も担当されているので、自業自得ということになるのだろうか。
これでいい、と思って書かれているのだとすると、ちとあんまりである。

主演は、コメディの帝王 阿部寛さん。
いつものようにしっかり演じられているのだが、役にはまり過ぎているだけに逆に面白味がない。
ムロツヨシさんにも同じことが言える。
ネットでは、大倉忠義さん、大島優子さんの演技の評判が悪いようだ。
しかし、あの脚本では、誰がどう演じても大して変わりはないだろう。
むしろ被害者に思える。

「疾風ロンド」に「人生の一本」を求めて観に行く人はいないだろう。
だから、少々辻褄が合わなくても、登場人物の行動がいちいち理解不能でも、
気楽に笑えるデートムービーとしてなら、こういう映画のニーズもあるのだと思う。
ほとんど成立していないような話の展開だが、映画の後の食事のときなどに、あそこがひどかった、あそこも無理筋だった、あそこなんか滅茶苦茶だったと盛り上がることができそうだ。
ひょっとしたら、監督さんはそこを狙って作られたのかもしれない。
そうだとすれば、さすがプロである。

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