映画評 「NO SMOKING」

本作は、細野晴臣さんのドキュメンタリー。
なんでも、デビュー50周年らしい。

ＹＭＯでの活躍が鮮烈だが、
「はっぴいえんど」で日本語ロックの草分けとなった存在でもあり、
多くの歌手（松田聖子さん、山下久美子さん、イモ欽トリオさん、などなど）に楽曲を提供されてもいる。

しかしなんというか、言葉でくくれない方である。
大御所中の大御所ミュージシャンだが、大御所感がまるでない。
ふうわりふうわり、プカリプカリされている。
自由気まま、思いのまま。
音楽も、売れる売れないを考えるより、
自分が楽しいかどうかを最優先にされているように見える。

それでいて、世界中にファンがおられる。
映画では、アメリカやイギリスでの最近のコンサートの様子が映されるのだが、
それほど大きな箱ではないにせよ満員で、
大変な熱狂ぶりである。
海外の若者たちが、ＹＭＯではなく、細野さんのバンドを見たくて集まっている。
なんだか不思議で、とても素敵な光景だった。

タイトルの「NO SMOKING」は、細野さんが無類の愛煙家であることから来ているのだろう。
映画の中で、
「煙草をくゆらすのと、音楽をくゆらすのは似ている」
といったことをおっしゃっている。
今時、煙草を吸うというと露骨に嫌な顔をされる方も多いが、
煙草を愛しておられる方もいるのである。
そりゃ、身体にはよくないのかもしれないが、得られるものは半端なく大きいのだろう。
細野さん自身、自由にたゆたっておられるようだ。

映画は、細野さんのファンならタマラナイものだろうし、
細野さんに特別思い入れがなくても、音楽好き、人間好きの人なら楽しめると思う。
私は、小山田圭吾さんが出るシーンを楽しみにしていたが、
星野源さんのナレーションが目当てで来られる方もおられるだろう。
どんな楽しみ方も出来そうである。
食後に見ると、ついうとうとしてしまいそうだが、それもありな気がする。
「どうぞ、お好きにご覧ください」
と細野さんがおっしゃっているように思える。