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「イージス・アショア」の配備計画停止で思うサンクコストの考え方 [ヨモヤ]

防衛省が、秋田県と山口県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を発表した。
理由としては、自衛隊演習場内から迎撃ミサイルを発射した後、切り離されたブースター部分を、場内に確実に落下させられない恐れがあるというものである。
ブースターを安全に落下させるには、ミサイルそのものの改修が必要となり、
新たに2千億円、10年というコストと期間がかかるため、合理的ではないと判断したのだという。

この件にかかる技術的な問題については、正直なところよくわからない。
考えてみたいのは、「サンクコスト」という考え方についてである。

サンクコストは、日本語では「埋没費用」と直訳されている。
ウィキペディアによれば、
「事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと」
とされている。
つまり、すでに使ってしまったお金で、もう返ってくることはなく、
判断するときには除外して考えるべき要素、ということになる。
しかし、こちらもウィキペディアによれば、
「埋没費用は、事業や行為を中止しても戻ってくるものではない。しかし、埋没費用を考慮した結果として、合理的でない誤った判断を下す場合がしばしばある」。
とされる。

有名な例がコンコルドである。
若い人は知らないかもしれないが、イギリスとフランスの共同事業として運航された超音速旅客機であった。
コンコルドは、かなり早い段階で採算が合わないことがはっきりしていたらしいが、
それまでの投資額が巨大であったために引くに引けず、だらだらと赤字を垂れ流し、
しまいには事故まで起こしてしまった。
サンクコストを考えるうえでの典型とされている。

サンクコストでの教えは、
「これまでに使ってしまって、もう返ってこない埋没してしまったコストではなく、
これからいくらかかり、それで意味があるのかどうかを考えなさい」
というものである。

さて、イージス・アショアについてであるが、
「すでに120億円も使ったのであり、税金の無駄遣いではないか」
「120億円支出の責任をどう取るのか」
という意見が多くみられる。
感情としてはよくわかるし、誰もが気になるところだと思う。
しかし、正しく判断するためには、この120億円はサンクコストであり、
意思決定する際にはできる限り除外して考える必要がある。
120億円はもったいないが、それを惜しむあまり、さらに無駄を重ねては本末転倒である。

野党やマスコミにとっては、正しい税金の使い方を監視することは使命であるともいえる。
だから、イージス・アショアの件について追及することは必要だし、当然だと思う。
しかし、使ってしまった分の責任を問い詰めるような方向にばかり向かってしまうと、
間違ったメッセージになってしまうのではないかと心配する。
つまり、今後の事業において途中でおかしいと気づいても、
集中砲火を受け、責任を追及されるくらいなら、とりあえず完成させてしまおう、
という誤ったインセンティブが働くのではないかと危惧するのである。
もちろん、どうして間違ったのかを検証することは大切であるし、
追及に手心を加えるべきというのではない。
ただ、サンクコストの考え方は忘れてほしくない。

防衛は国家の根幹であり、このことについて知見を結集するのは正しいことだと思う。
是非とも意味のある議論となることを願いたい。

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