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映画評 「かそけきサンカヨウ」 [映画評]

コロナ禍にあっても、ドシドシ映画を撮っている今泉力哉監督。
2021年に公開される映画は、「街の上で」「あの頃。」に続いて3作目。
それぞれ違う題材を今泉監督流に料理されている。
どれも、なんとも言えない空気感がある。

本作は、窪美澄さんの同名短編小説を映画化したもの。
「サンカヨウ」とは、メギ科の多年草で(メギ科ってなんだ?)、
水に触れると花びらが透明になる性質を持つ、珍しい植物である。
「かそけき」は、漢字で書くと「幽けき」であり、
今にも消えてしまいそうなほど、薄い、淡い、という意味。
そのとおり映画も、実に淡々と進む。
なんだか往年の日本映画のよう。

悪い人、
嫌な出来事、
などは起こらず、
もちろん多少のあれこれはあるものの、
静かに時が流れていく。
家族の微妙な感情のもつれやほどけが、ふんわり描かれ、
事件は起きないのに、見ていて退屈しない。

志田彩良さんが主演。
清々しい演技だったが、志田さんは22歳。
中学生から高校生の役はちょっとだけしんどい。
お相手の鈴鹿央士くんも21歳。
童顔だからなんとかなるが。
志田さんの父役に井浦新さん。
私の中ではいつまでも「ピンポン」のスマイルだが、今や第一線の俳優さんである。
中井友望さん、鎌田らい樹さんなどの若手俳優陣がみずみずしくてよかった。

「かそけきサンカヨウ」は、日本映画らしい小品。
芸術の秋にしっとり観るのにぴったりの作品である。

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