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映画評 「正欲」 ~ 苦しみが伝わらない ~ [映画評]

朝井リョウさんの同名小説の映画化。
監督は「あゝ、荒野」「前科者」の岸善幸さん。
個人的には「前科者」の方が好きである。

本作は、東京国際映画祭のコンペティション部門で、最優秀監督賞・観客賞を受賞した。
テーマ的にも、体裁的にも、いい映画っぽい。
しかし、なんと言えばいいのか、正直なところ深さが感じられない。
ドシンと伝わるものがない。
原作もこんな感じなのだろうか。
いや、そんなはずはない気がする。

意外な対象へのフェチズムがテーマなのだが、
当事者たちの苦しみが伝わらない。
当たり前のことだが、どんな人間もそれぞれに悩みを抱えている。
この映画で描かれているフェチの人たちも苦しいのだろうが、
彼らが特別苦しいとは思えない。
少なくとも、そこが説得力を持って描かれていない。

普通の人、の代表のような感じで検事の家庭が映されるのだが、
これが信じられないほどにステレオタイプ。
あまりにも安易な描き方に気が抜ける。

フェチに悩む二人を新垣結衣さんと磯村勇斗さんが演じる。
ずっと深刻なお芝居をされているのだが、共感にはつながらない。
検事役に稲垣吾郎さん。
わかりやすい役にわかりやすい演技。
本作では、残念ながら説得力を下げる方に働いている。

テーマは深そうなのに、
映画は浅瀬を漂っている。
そんな感じの作品である。

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