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誰も信じていないプライマリーバランスの黒字化 [公会計]

政府が、国と地方の基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランス(PB)に関する最新の試算を発表した。
財政再建の目標として2025年度の黒字化をめざしていたが、新型コロナウイルスの影響を受け、
25年度のPBの赤字額は、たとえ高い経済成長が実現した場合でも7・3兆円に拡大し、
黒字化は29年度まで遅れるとした。

試算に使われている「高い経済成長」とは、
21年度には経済が回復し、その後も「実質2〜3%程度」の高い成長を維持するという想定。
現段階では、とてもありそうにないように思える。
となると黒字化は2029年度以降ということになりそうだ。

この発表を聞いて、
「そんなとんでもない」
「あきらめずに目標達成を目指すべきだ」
と思う人はいるだろうか?
いや、いないだろう。
ほとんどの人は、
「PB、なにそれ?」
だろうし、逆に詳しい人は、
「いや、もともと25年の黒字化も無理だったから」
とクールに言いそうだ。

今回の発表は、
コロナの影響で2025年度の目標が29年度以降になった、
というもので、多くの人はそれなら仕方がない、と感じるだろう。
しかし、PB黒字化目標の先送りは今に始まったことではない。
遡れば2001年の小泉内閣の時代に、
「2010年代初頭にプライマリーバランスを黒字化する」
といった見込みが示されていたのである。
綾小路きみまろさん流に言えば、
「あれから20年」。

目標期限が近付くたびに、
リーマンショックだ、
大震災だ、
チャイナショックだ、
なにやらかにやらで、目標はズルズル先延ばしにされてきた。
今さら延ばされても、なんとも思わない。

こうも繰り返し目標が先送りされ、
それで別になんとかなってしまうのであれば、
設定した目標自体がおかしいのではないかと考えるべきであろう。
もしくは、そもそも達成不可能な目標と知るべきなのだろうか。
どちらにしても、もういい加減に目標自体を見直した方がいい。
見直さないならきちんと達成すべきであろう。

って、普通そうですよね?
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もともと入りと出がまったく噛み合っていない地方交付税制度 [公会計]

先日NHKのサイトに
「地方交付税 4800億円分が不足 国の税収減で」
との見出しのニュースが掲載された。

内容を要約すると、
・昨年度の国の税収が政府の見積もりを1兆7000億円余り下回り、各自治体に交付した地方交付税の総額16兆3000億円のうち、4800億円分が財源不足になる。
・地方交付税が財源不足となった場合、明らかになった年度の翌年度以降の交付額で調整することになっている。
・高市総務大臣は、新型コロナウイルスの影響もあり、来年度に向けては例年にも増して厳しい状況にあり、地方の財政運営に影響が出ないよう努力する考えを示した。
というものである。

さらに、
「地方自治体の財政を支援するための地方交付税は、法人税や所得税などの国税が財源となっていて、毎年度、その年度の税収の見積もりを基に交付額を決めています。」
との解説もついている。

この記事を読むと、こう思う人が大半だろう。
①地方交付税は国税が財源となっていて、その範囲で配分額が決められているらしい
②入ってくるはずの税収が下がれば、自治体に交付される地方交付税もそれに合わせて下がる仕組みのようだ

ひょっとしたら自治体にお勤めの方のなかにもそのように理解されている方がおられるかもしれないが、
当然のことながら、上記の理解は間違っている。

まず①について。
確かに地方交付税に割り当てられる国税は、所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%といった具合に決められている。
しかし、これはこの分が地方交付税として使われることが決められているというだけで、上限を定めたものではない。
地方交付税の総額は、総務省が作る「地方財政計画」によって決められる。
この計画は地方の実情を反映させるものであるが、当然に財務省との交渉の中で額が調整されるものであろう。
とにかく、地方交付税の原資となる額とは違うところで決められるのである。
足らない分は、別途考える仕組みとなっている。

②の考え方は、本来なら逆になるべきであろう。
なぜなら、税収が下がるということはその分自治体の歳入が減るということであり、
さらに景気が悪ければ生活保護費などで歳出が増えると見込まれるため、
地方交付税で埋めるべき歳入と歳出の乖離幅が広がるからである。
地方交付税には財源確保機能があるとされており、苦しいときほど自治体への交付額が増えるのがそもそもの形である。

なんだかややこしかったかもしれない。
NHKのサイトに書かれている内容は誤解を生じかねないものであったと思うが、
丁寧に解説したら相当なボリュームが必要なのでやむを得ない面もある。
とりあえず、地方交付税は入りと出が全く別の要素で決まる制度である、
ということを押さえていただければと思う。
そして、
「それって何だかおかしくない」
という感想はごく自然であると思う。

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国債について考えるきっかけになれば [公会計]

政府は、減収世帯に30万円を支給する措置を撤回し、
国民1人あたり10万円を給付する方針に転換した。
その迷走ぶりが批判され、
給付までに時間がかかることが懸念されているが、
元の案に比べれば、いろいろな意味でいいとは思う。

しかし、まだ事業の進め方については完全な一致が見られていないようだ。
全員給付のはずが、麻生財務大臣が、
「(全員にではなく)手を上げた方に1人10万円ということになる」
とおっしゃったからである。
財務省的には、高額所得者に払うのは納得できないのかもしれないが、
条件を付けてしまうと線引きが難しいし、進んで手を上げにくくなる人もいると思われる。
また、去年の高額所得者が今年もそうとは限らない。
何より、スピード感が失われる恐れがある。

この発言について、立憲民主党の蓮舫議員がツイッターで噛みつき、
そのつぶやきが炎上している。
蓮舫議員のツイートは、
「麻生大臣、このお金は貴方のものではありません。
国債という国民の借金です。
物言いに気をつけてください。」
というものであった。

これに対し、
「国債は国民ではなく政府の借金」
「完全に勘違い」
「この程度の理解で大丈夫か」
といった書き込みが次々になされる状況になっている。

単なる言葉のあやと言えなくはないが、
国債は政府が起こす借金であり、国民にとっては資産という面もある。
「物言いに気をつけて」と財務大臣に突っ込むにしては、
あまりにも不用意であったと言われても仕方がないだろう。

ただし、政府の借金であったとしても、返すための原資が税金であることは変わらない。
もちろん、借り換えてつないでいくという手もあるが、
永久に税金を充てないというわけにはいかない。

今は、借金が増えることを気にするより、
思い切って緊急的な手当てをするべきときだと思う。
しかし、いつまでも緊急措置が続けられるわけではない。
そのときのことも想定して、改めて国債について考える機会になったとしたら、
これはこれで意味があった、と感じなくもなくもなくもない。

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「真面目に」消費税について考えたい [公会計]

参議院選挙が終わった。
事前の予想どおり、与党勢力が過半数を確保した。
これにより、10月に予定されている消費税増税への議論も、一応の終止符が打たれることだろう。

今回は一定の決着が見られたが、消費税については、賛否両論がある。
意見はいろいろあっていいと思う。
ただ、大切なテーマだけに、「真面目に」考えたい。
ちまたには、ちと真面目さに欠けるような意見も見られるからである。

例えば、
「消費税を下げれば景気が回復する」
という主張である。
私も、消費税を上げることは、景気にマイナスのインパクトを与えると考えるが、
下げたからと言って消費を増やそうとする人がいるだろうか。
下げるとなったら、かえってそれを待っての買い控えが起きるのではないだろうか。
一方、消費税を下げると税収が減るのは確実である。

「前回の増税時にはリーマンショック以上の消費減につながった」
という主張も、ちょっと大袈裟な気がする。
確かに前年度比の落ち込みは激しいのだが、それは駆け込み需要で前年度の数字がかさ上げされているからである。
それを示さないので、単に前年比の絶対額だけで言うのはいかがなものだろう。

また、
「福祉目的のはずの消費税は法人税減税の穴埋めに使われた」
という説も、納得感が低い。
そもそも消費税の使い道(支出)についての議論のはずが、収入にすり替えられているのが残念だが、
法人税が減っている間に消費税が増えているからというだけで穴埋めに使われたとするのは短絡に過ぎる。
実際に歳入不足分の穴埋めには国債が主に充てられていて、その増加額は消費税の比ではないのだが、
それを言わないのはどうだろう。
また、法人税減税には、景気対策や国際間競争の意味があったはずで、それは不要と考えておられるのかどうか。

このブログにも何度か書いたが、
私自身、消費税には懐疑的な考え方を持っている。
だからこそ、「ためにする議論」はご遠慮いただきたい。
そうした意見が混じることで、
「ああ、例の反対のための反対ね」
と思われてしまうのが残念である。
きちんと議論して、あるべき税の方向を考えたい。

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年金積立金の運用はここまでは立派なパフォーマンス [公会計]

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2018年度の運用実績を発表した。
2018年10~12月期には四半期として最大の14兆円の運用損を計上したが、
2019年1~3月期で持ち直し、
トータルでは2兆3795億円の黒字を確保した。

年金については不安をあおるような報道が相次ぎ、
今にも給付が途絶えてしまうような心配を持っておられる方もおられるかもしれないが、
実際には積立金は増え続けている。
自主運用を開始した2001年度以降の累積収益額は約66億円にまで積み上がり、
運用資産額は159兆円と過去最大となっている。

積立金だから、取り崩して使っていくことが想定されているわけだが、
これまでのような運用が続けば、枯渇するどころか積立金はどんどん増えていく。
誰も信じなかった100年安心が実現されるかもしれない。

株での運用を増やしたことについて、懸念を持たれる方もおられる。
もっともな心配であるとは思うが、
これまでの実績についての評価もしっかりしないと、批判のための批判になってしまう。

運用方針は当面変わらないだろうから、
国民の一人としてはGPIFの運用がうまく行くことを祈りたい。
アメリカ株が好調過ぎるのがちょっと心配だが。

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地方出身者が多い都民がふるさと納税を多く活用しているのは当然? 若しくは、お金持ちは税金に敏感ということ? [公会計]

個性的な返礼品が打ち出されたり、
一部の自治体が異様な金額を集めたり、
総務省が規制に乗り出したりで、
何かと話題のふるさと納税。
しかし、実際にふるさと納税をしたことがあるという人は、それほど多くないのではないだろうか。
総務省の「ふるさと納税現況調査」によると、約5%くらいのようだ。
つまり、20人に1人くらいだから、それほど多いとは言えない。

だが、ふるさと納税の活用状況は、随分と地域差があるようだ。
日本経済新聞の記事によれば、ふるさと納税の寄付者の割合が最も高かったのは東京都中央区。
次いで港区、千代田区。
いわゆる都心3区がトップ3を占めている。
4位以降も、文京区、渋谷区と続き、23区以外でベスト10に入ったのは、兵庫県芦屋市だけだった。

現在東京に住んでいる人のうち、かなりの割合の人が、ふるさとを東京以外に持っているだろう。
だから、都内の人がふるさと納税を活用する割合が高くなるのは自然なことであり、そもそもそうした狙いで設計された制度でもある。
しかし、それだけだろうか。

ふるさと納税利用者率で、23区以外で唯一10位以内に入った芦屋市と言えば、関西地方有数の高級住宅街で知られているところである。
都心3区も、住民の所得水準が高い。
つまり、お金持ちほど、ふるさと納税に熱心なのではないかとも考えられる。

納税額が多い高所得者ほど控除を受けられる税額の上限が大きくなるため、お金持ちの方がふるさと納税額が大きくなるのは当然だが、額ではなく利用率も高いとなると、それだけではなさそうだ。
この件を報じていた日本経済新聞には、
「確定申告など複雑な控除の仕組みに高所得者ほど慣れていていることもある」
との分析も掲載されていた。
それに加えて、高所得者ほど節税や節約に熱心、ということも言えるのではないだろうか。
いや、節約に熱心だったから、高所得者になったのかもしれない。

ふるさと納税制度は、金持ち優遇になっているという指摘がある。
控除額の上限が大きくなるという点では、確かにそのとおりである。
だが、きっと高所得者の方々は、ふるさと納税だけではなく、いろいろな制度を使って、節税・貯蓄に励んでいるのだと思う。
自分のお金を大切にされている、
自分の稼いだお金の使われ方を気にされている、
という要素が強いのだろうか。
となると、妬むばかりではなく、参考にすべきところもあるかもしれない。

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財政の膨張を批判したくなるのももっともだが一般論では届かない  ~ 全体・個別とも現実に即した議論が必要 ~ [公会計]

来年度予算に向けての各省庁の概算要求が出そろった。
総額が過去最大の102兆円台後半に達したことについては、否定的な見解を述べる新聞も多い。
例えば毎日新聞は、
「過去最大の予算要求 借金漬けを顧みぬ法外さ」
との見出しを付けている。
今回の予算要求は、現在の財政状況をまったく踏まえておらず、「法外」であると強く批判しているのである。

さらに毎日新聞は、
社会保障費を抑えるための数値目標がないこと、
公共事業費に国土強靱化にかこつけた非効率な事業が紛れ込まないか懸念されること、
政権が重視する防衛費も過去最大であること、
など、概算要求の問題点を挙げている。

これらはよく指摘される事項でもあるが、ではどうすればいいかとなるとあまり具体的な策が見えてこない。
例えば社会保障については、高齢者の数が増えるなか、医療・年金・介護の費用をどのように削減していくのか、その道筋は闇の中である。
公共施設が老朽化し、災害が激甚化しているなかで、公共事業をどのように減らすのか、
現在の国際環境のなかで防衛費を削減すべきなのか、すべきとすればどこに手を付けるのか、
などの項目についても、感情論ではなく、現状と数字をもとに議論を進めたいものである。

加えて毎日新聞では、
「消費増税で国民に負担を求める以上、無駄を徹底的に省かなければならない。」
と主張されている。
これももっともなようではあるが、増税に合わせて歳出をカットすると、二重の景気抑制策になってしまう。
このことは、日本経済に大きなダメージになりかねない。
よく「アクセルとブレーキを同時に踏んでいるよう」という表現があるが、この場合は、「フットブレーキとサイドブレーキを同時に踏んでいるよう」な感じではないか。

確かに、国が膨らませ続けている負債はあまりにも大きい。
均衡予算を求めたくなる気持ちも十分に理解できる。
しかし、一般論では届かない。
具体策付の対案を示さないと、言っているだけ、になってしまう。
それでは変わらない。

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消費増税は「やれるか」「やれないか」より「やるべきか」「やらざるべきか」で [公会計]

国の債務が膨らんでいること、
高齢化に備えた財源が必要なこと、
諸外国と比べて税率が低いこと、
などを理由として、消費増税が長く議論されている。
賛成反対入り混じり、いつまでも決着がつきそうにないが、一つ言えることがある。
それは、日本には消費税は向いていない、ということである。

消費税導入に向けては、いくつもの内閣が吹っ飛ぶようなドタバタがあり、
その後も税率を上げようとするたびに大きな議論となる。
また、実際に税率を上げるたびに、深刻な不況に見舞われる。
他国ではそういうことはあまり起こらないと聞く。

さて、麻生財務大臣が、来年10月に予定する消費税率10%への引き上げについて、
「今回は間違いなくやれる状況になっている」
とおっしゃったそうだ。
過去2回の増税延期については
「経済状況が今ひとつ確実なものではなかった」
と説明されたという。

確かに、今は各種の経済指標を見ると軒並み高水準だし、海外の経済状況も悪くない。
政治的環境も含め、
今やれなければいつやれるのか、という感じはある。
しかし、過去に増税したときも「今ならやれる」という思いで実施したはずだし、給付金やエコポイントなどで需要喚起策もとっていた。
それでいて、大きな景気の落ち込みになったことは忘れてはならない。

また、今回の増税時には軽減税率の導入が予定されており、2%がそのまま増収になるわけではない。
であれば、2%の増税より、2%のインフレの方が、税収にとってもよほどいいことになる。
もちろん、その2%のインフレが難しいのではあるが、
2%増税して、それをきっかけに2%のデフレとなったら、かえって減収となってしまう。

繰り返すが、消費税は日本にはあまり向いていない税制だと思う。
国民の反発は非常に大きいし、他国ではないような、増税時の反動の大きさも繰り返し経験してきた。
それでもなおかつ引き上げるだけの効果が果たしてあるだろうか。
もう決まっていること、ではなく、最後まで冷静に考えたいところである。

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年金が黒字という事実   ~ この状況が続くかどうかは不明も現実は知っておきたい ~ [公会計]

日本で年金というと、
「崩壊寸前」
「維持不可能」
「自分たちはもらえるはずがない」
という語られ方をすることがほとんどである。
それは具体的な数字に裏打ちされたものではないかもしれないが、高齢者が増えていく状況から、「そうなるに決まっている」と多くの人が思っている。
かつて、1人の高齢者を6人くらいの働き手で支えていたのを、今は2人くらいで支えていて、将来的には1人が1人を支えるくらいになる計算だから、こんな状況で制度が成り立つわけがないと、ほとんどの人が直感的に思っている。
しかし、遠い将来はさておき、現実はどうだろう。
年々、年金会計が赤字を垂れ流している状況だろうか。
積立金は、どんどん目減りしているだろうか。

厚生労働省が、2017年度における年金収支決算を発表した。
それによれば、
厚生年金は10兆4,479億円の黒字、
国民年金も2,729億円の黒字だったという。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による公的年金の運用が好調だったこともあり、
17年度末の年金積立金残高は、厚生年金と国民年金の合計で164兆1245億円となり、市場運用を開始して以降、過去最高となった。
つまり、年金会計は、年々苦しくなっているという状況ではなく、むしろ積立金を積み増しているのである。

この状況が続くわけがないとは思うが、絶対に続かないとも言い切れない。
実際、今は黒字である。
もし、株価が上がり続け(他国の相場を見ると、あり得ない話ではない)、払うべき人が保険料をしっかり納めたら、案外年金制度は、かなりの期間維持できるのかも知れない。
少なくとも、絶対に破綻する、という制度ではないのかも知れない。

年金制度には、克服すべき課題が多いのは確かであろう。
しかし、事実を見ないで、感覚だけで悲観論に傾いても意味はない。

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税収増だけでは財政再建は果たせないことははっきりした ~26年ぶりの税収も国家財政はどっぷり赤字~ [公会計]

2017年の国の一般会計の税収が58兆円台後半となったようだ。
この数字は、バブル期直後の1991年度の59.8兆円以来、実に26年ぶりの高水準だという。
極端な増税をしたわけでもないのに税収が増えた。
目出度い話である。
しかし、財政が立ち直ったという話はとんと聞かない。
それはそうだ。
税収がやっと26年前に戻ったとしても、
歳出のレベルはあの頃よりずっと増えているのだから。

ちなみに1991年度に59.8兆円だった税収は、
5年後の1996年に51.9兆円に下がり、
さらに5年後の2001年には47.9兆円と、
10年間で10兆円以上も下がっている。
さらにリーマンショック後の2009年には38.7兆円とバブル崩壊後最低の水準にまで落ち込んだ。
そこから景気回復に伴い税収が増えてきた。
つまり2009年度と比べると2017年度は、実に20兆円も税収が増えたことになる。
そして、20兆円増えたにもかかわらず、赤字国債頼みの財政運営には変化がない。

法人税率を下げることによって、税収が上がるのか下がるのか、という議論がある。
普通は税率を下げれば税収も下がるに決まっているが、企業活動が活発化することによって、結果的に税収は増えるという論者もいるのである。
ただ、今の日本の財政を見ると、これによって税収が上がろうが下がろうが、財政再建にはあまり関係がないということになってしまう。
歳出側の構造をしっかり見直さない限り、せっかくの税収増のチャンスも活かせない。

来年10月から消費増税が予定されている。
これにより、税収が増えることが期待されるが、歳出構造の改革にはほとんど手が付けられていないように見える。
よく言われることだが、バケツの底が抜けていては、どれだけ水を入れても貯まらない。
景気が回復しているこの時期に、本来であれば貯えておかなければいけなかったのだが。
多くの国で、そのように財政運営をしているのだが。

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