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書評 「清原和博への告白」 ~ オススメ ~ [読書記録]

はじめに気をつけていただきたいのは、この本は清原さん自身が書かれた「告白」という本とは別物ということである。
「への」告白、というタイトルになっているように、これは清原さんに甲子園でホームランを打たれたかつてのライバルたちの告白である。
いや、清原さんへのラブレターと言った方がいいだろうか。

清原さんは、甲子園で歴代最多の13ホームランをかっ飛ばしている。
2位の選手が6本だから、まさにぶっちぎりである。
この本の主役は、清原さんではなく打たれた投手の方。
一部の選手を除いて、無名の存在と言っていいと思うが、それぞれの野球に賭けた思いは熱い。
そして、清原さんへの思いも熱い。
その思いは、もちろん一方的なものなのだが、ほとんど恋のような感じである。
甲子園で清原さんと戦えた、ホームランを打たれた、ということが、誇りになっている。
生きていく糧になっている。
そして、クスリに手を出してしまった清原さんを、心から心配している。

この本を読むと、今騒がれている球数制限が、やたらみみっちい話に思えてくる。
せこい話してるなあ、と感じられる。
一度きりの高校時代、
子供の頃から夢に見た甲子園。
一人一人いろいろな思いがあり、
いろいろな家庭事情があり、
それでも野球を続ける。
高校野球の先に行ける人間など、ほんの一握りであり、
甲子園に行ったところで、その後の人生が保証されるわけでも何でもない。
それでも、そこを目指す。
自分の思いだけではなく、
親や、兄弟姉妹や、周りの人も思いを背負いながら、
その先のことなど考えないでプレーする。
野球に情熱を燃やしたって、
甲子園にすべてをかけたって、
損得を考えたら、釣り合うものはない。
しかし、そんなことはどうでもいい。
そのとき感じた思いは、勲章となって残っていく。

高校野球に命を燃やす若者を
「時代錯誤」
「ナンセンス」
笑う人もいるだろう。
「その先の人生の方が長いんだから」
「たかが高校野球なんだから」
と割り切る人もいるだろう。
周りがどう思おうと燃える人間は燃える。
そして、高校時代に感じた思いは、いくつになっても消えない。

本作は、雑誌への連載をまとめたものなのだが、
それを読んだ清原さんからの返事も掲載されていて、
これがまた胸を打つ。

野球になると、つい熱くなってしまうが、それはそれとして、
読み物としても十分によくできていて面白い。
野球に詳しくなくても、清原さんに思い入れがなくても、
きっと楽しめると思う。
おすすめの本である。

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