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映画評 「CUBE 一度入ったら、最後」 [映画評]

いきなり言ってしまうが、
「CUBE 一度入ったら、最後」は、
「はあ、なんでこうなっちゃうの」的、残念至極な作品であった。
1997年に撮られたカナダの映画のリメイクで、
もとの作品については、細部は覚えていないが、面白かった記憶だけはあるのだが、
本作については、なにもかもあっという間に忘れるが、面白くなかった記憶だけは残るだろう。
わざわざよその国の傑作をリメイクしてこれとは。
とほほほ。

設定は多くの方がご存知のことと思うが、
立方体の部屋がつながる空間に閉じ込められた男女数名が決死の脱出に挑む、
というもの。
閉じ込められた人間たちにつながりはなく、
なぜ閉じ込められたのか、どうやって閉じ込められたのかも不明。
この大掛かりな建物を、
誰が建てたのか、なんの目的で閉じ込めているのかも不明。
オリジナル版は、低予算にもかかわらず、世界で大ヒットを記録し、
アイデア一発で世界を驚かせた伝説的な作品である。

主演の菅田将暉さんがインタビューに答えているところによれば、
「最初は、海外のチームが日本版の『CUBE』を、日本の文化に合わせた密室劇として撮るという話だった」
のだそうだ。
それがコロナの影響で来られなくなって、ということらしいが、当初の予定どおりならこんな惨劇にはならなかったのだろうか。

このところの日本映画は、
虐待やいじめを描くのが規定演技のようになっている。
「CUBE」は設定自体が閉鎖環境なので、それでもう十分なのに、
閉じ込められた人の背景まで閉塞状況として描く。
しかもその背景が、規定演技に沿ったありがちかつペラペラなものだから、
かえって緊張感がなくなり、ジメジメベタベタしたものだけが残る。

謎解きの面白さもなく、
協力して切り拓いていく爽快感もない。
ついでに言えば、星野源さんによる主題歌もよろしくない。
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」を文字ったようなタイトルもよろしくない。

菅田将暉さんが主演。
どうしてこの仕事を受けてしまったのかしら。
杏さんは、そういう役だから仕方がないのだろうが、最初から最後まで同じ表情。
斎藤工さん、吉田鋼太郎さん、岡田将生さんが熱演されているが、この映画では頑張れば頑張るほど悪い方向に行ってしまう。

メガホンを取ったのは、清水康彦さん。
「MANRIKI」では挑戦的な作品にひかれるところもあったのだが、本作はあんまりである。
作品があんまりなのは、当然ながら監督の責任に帰結する。

「CUBE 一度入ったら、最後」は、年間でも上位クラスのハラホロヒレハレ作品。
傑作のリメイクなのだから、傑作にはならなくても、まあまあくらいには仕上げてほしかった。
日本映画の行く末が心配になってしまう一作であったが、
日本映画の危機を伝える意味では意味のある作品なのかもしれない。
とでも考えないとやりきれない。

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