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映画評 「君たちはどう生きるか」 ~ 虚心に観れば ~ [映画評]

日本が世界に誇る芸術家である宮崎駿監督の最新作。
宣伝を一切しない、という前代未聞のプロモーション戦略も含め、大きな話題となっている。

宮崎駿監督の功績は偉大というほかなく、
そこには最大限の敬意を払う必要がある。
しかし、そのことと個々の作品の評価は別物である。
思ったとおり、感じたとおりに批評するのが礼儀であると思う。

本作「君たちはどう生きるか」は賛否両論だというが、
虚心に観たらどうだろう。
監督名が伏せられていたらどうだろう。

そもそも、エンタテインメントとして面白いかどうか。
カリオストロやナウシカ、もののけ、千尋と比較するのはフェアではないかもしれないが、
そうした過去の作品を引き合いに出すまでもなく、
あまりワクワクしなかった人が多かったのではないだろうか。

宮崎駿監督作品は、そのメッセージ性について語られることが多いが、
それ以前に娯楽作としてとんでもなく優れているのが大きなポイントだったと思う。
ずば抜けて面白いから広がる、
広がるからもっと知りたくなる、
という感じである。
本作には、その引きがない。

登場人物に魅力を感じられないのが、
ときめきを覚えることができなかった大きな理由だろう。
主人公をはじめ、人物像が十分に伝わらないままにあれよあれよと話が進むので、
感情移入することができない。
そのため、彼らの決断に共感のしようがない。

本作について
「難解」という評をよく聞くが、
そういう感じではないと思う。
単に「よくわからない」でいいのではないだろうか。
試写会後のコメントで宮崎駿監督は、
「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳がわからないところがありました」
と冗談めかして語られたとのことだが、
案外本音である気がする。

タイトルもどうなのだろう。
「君たちはどう生きるか」
と訴えるにふさわしい内容を提示されているだろうか。
観る側がタイトルの意味をあえて深読みしなければならないのも妙な話である。

ただ、どんな監督だって百発百中は難しい。
宮崎駿監督の場合、どうしても年齢を取りざたされてしまうが、
「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督作品は、
まだ50代なのに「竜とそばかすの姫」という困った作品を生んでしまった。
だから本作の出来栄えを単に年齢によるものとはとらえたくない。

引退などと言わず、
宮崎駿監督には是非次の作品を撮っていただきたい。
そして
「やっぱすごい」
とうなりたい。
「まいりました」
と頭を下げたい。

引退などと言わずに。
是非次の作品を。

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