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映画評 「高野豆腐店の春」 [映画評]

「こうやとうふてん」ではなく「たかのとうふてん」と読む。
広島県尾道で、昔ながらの小さな豆腐店を営む職人気質の父と娘の日々が描かれる。

主演は藤竜也さん。
娘役に麻生久美子さん。

人情ものなのだが、
ところどころコメディ要素が混じる。
お年寄りをいじる感じのものだったり、
女子高生とのギャップで笑わそうとするものだったり。
これが面白いのならいいのだが、
たださむい。
入れなければならない事情でもあったのかもしれないが、
不要だったと思う。
コメディ部分がなければもっと心に届いただろうに。

コメディ要素があるせいか、父の描き方がブレる。
一本気で融通が利かない昔の男であるのならそれでいいのだが、
娘の再婚相手を見つける際に下手な策を弄したりするのは単に興醒め。

広島に特有の背景が描かれたり、
家族の歴史が語られたり、
老いらくのロマンスが芽生えたり、
といったところは映画に奥行きを与えている。
きちんと撮ればちゃんとした映画になったかもしれない。
だけに惜しい。

藤竜也さんは「それいけ!ゲートボールさくら組」に続くコミカルなおじいさん役。
年相応と言えばそのとおりだが、ちょっと寂しい。
ちょっと怖い感じの藤さんも見たい。
麻生久美子さんは、自分の仕事をしっかり。
藤さんといい関係になる女性役に中村久美さん。
老け役をきっちりこなされていた。

静謐さになり、頑固さになり、
食へのこだわりになり、原爆への怒りになり、老いらくの恋になり、
徹底していたらどうだっただろう。
そこから逃げてしまった。
「高野豆腐店の春」はもったいない作品。
もっといい映画になる可能性はきっとあった。
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