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映画評 「アウトレイジ 最終章」 [映画評]

全部ではないが、たけしさんの監督作品は大体観ている。
初監督作品の「その男、凶暴につき」は衝撃的だったし、
「あの夏、いちばん静かな海。」の静謐な空気は忘れられない。
「Dolls」にも驚かされたし、
「キッズ・リターン」は、私が今まで観た数多くの映画の中でもベストの作品の一つ。
しかし、「アウトレイジ」シリーズはこれまで観たことがなかった。
評論家筋の高評価と反比例するように、あまり興行的には成功しないのがたけしさんの作品の特徴だったが、「アウトレイジ」はヒットした。
なのに、なぜか観てこなかったのだが、最終章ということで、記念に観ることにした。

期待して観に行ったが、期待を超えたかというとそうではなかった。
期待にたがわずとも行かなかった。
3作目の「アウトレイジ」だが、おそらく過去2作品の方が面白いのではないだろうか。
今作も捨て難い味を持っているが、ううむとうならされるほどではない。
リアリティを求める作品でないことはよくわかっているが、それにしても展開に無理があり過ぎる。
主人公の通そうとしている筋にも今一つ共感できない。

登場人物の思惑が複雑に絡まり合うのだが、それをきちんと物語に集約しているあたりには、脚本家としてのたけしさんの手腕の高さがうかがえる。
全体を貫くトーンのぶれなさには、監督としての熟練が見える。
しかし、だからこそもう少し遠くへ行けなかったかとの思いにもなる。
ラストも、腹に落ちなかった。

出演者には、西田敏行さん、大杉漣さん、岸部一徳さんなど、熟練の俳優さんが並ぶ。
濃ゆいメンバーばかりなのだが、印象に残ったのはフィクサー役を演じた金田時男さんという方。
俳優ではなく実業家らしく、セリフは少ないのだが、素の怖さが感じられた。

役者さんにベテラン勢が多いからなのか、
やくざ映画が好きな世代だからなのか、
客席には年配の人が多かった。
興行成績を見ると、アウトレイジは先週末のトップであり、前2作をも上回る出足らしい。
出来栄えと動員がイコールにならないのはよくあることである。

「アウトレイジ 最終章」は、アウトレイジファンへのけじめの作品なのだろうか。
続編があり得ないような形で完結させている。
前2作が好きな方は、あまり期待を高めないままにご覧いただきたい。
シリーズを通して観た人にしかわからない感慨があるだろう。
ぶらっと映画に行こうという人には、ちょい重い。
たけしさんの作品なので、映画ファンなら観る手はあると思うけれど。

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