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映画評 「LOVE LIFE」 [映画評]

「淵に立つ」「よこがお」「本気のしるし」
と評判作を連発されている深田晃司監督の作品。
これまた、なんとも鑑賞が難しい映画をお撮りになった。

残念ながら、ほとんどの日本映画は、ZAZYさんばりに
「なんそれ!」
と突っ込まざるを得ないものばかりである。
ご都合主義の展開、
登場人物の辻褄の合わない言動、
甘々浅々の設定などなど。
だから、鑑賞するというより、突っ込んで終わり、という感じになる映画がほとんどである。
奥が浅く、先がない。
しかし、本作はそうではない。

登場人物が、みんながみんな、弱く、駄目な人間である。
この人を応援したい、と思わせるような、通常の映画の主人公はどこにもいない。
凡百の映画であれば、
「どういう展開だ」
「いや、駄目だろうそんなことしたら」
で終わりになるところだが、本作ではそうした突っ込みは意味がない。
わかっていてそういう人物像を描いているからである。
そして、そうした駄目な人間たちの生活のことを
「LOVE LIFE」
としている。

この映画に関しては、登場人物に共感できないという通常の感想は無意味だろう。
共感できない人物像がわざと描かれているのだから。
しかし、裏を返してみたら、どう見えるだろう。
そう考えると、映画の出だしで描かれるオセロのシーンは象徴的である。
黒だったものが、一瞬にして白くなる。
もちろん、白だったものも一瞬にして黒くなる。

最低の人間に見えた義父が思いのほか懐が広く、
やさしく見えた義母が暗い思いを抱えている。
優柔不断で頼りない夫が最後の救いになる。
弱く助けるべき存在と見える言葉を話せない外国人が実は平気で人を騙す。
真っすぐに生きていると思えた主人公が実は自分勝手な存在で周りに生かされている。
だから、「LOVE LIFE」。

娯楽作としては、どうだろう。
ちっとも楽しめないし、すかっともしない。
しかし、何か引っかかるものがあり、観終わった後でいろいろ考えさせられる。

主演の木村文乃さんが素晴らしい。
陰のある女性役を見事に演じられた。
夫役の永山絢斗さんも好演。
優柔不断で頼りないという難しい役だが、説得力を持って演じられた。

「LOVE LIFE」は、評価が分かれる作品だと思う。
娯楽作として楽しめるかというとそうではなく、
何かを訴えてくる作品でもない。
観た側に委ねられている。
となると、こちら側もある程度覚悟して観なければならない。
ずしっと来る人もいるだろうし、なんだこれと思う人もいるだろう。
私は、時間が経つにつれてじわじわ来た。
監督の術中にまんまとはまった。

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