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映画評 「罪と悪」 ~ ラスト30分が残念も見応えある力作 ~ [映画評]

本作は、これが長編デビューとなる齊藤勇起監督のオリジナル脚本作品。
それは力が入る。
そして、気持ちばかりが先走ることなく、しっかり観させる映画として成立させていた。
次回作が楽しみになる監督である。

いい作品であったがゆえに、気になる点もいくつか。

まず、はじめからそれが前提となっている、
クリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」との類似である。
下敷きというより、リメイクのようにさえ感じた。
初監督作品のオリジナル脚本であれば、世の中にないものを撮られればよかったように思う。
まあ、日本版「ミスティック・リバー」を撮りたかったということなのだろうけれど。

もう一点は、終盤のへなへな感である。
真相が明らかになるにつれ、どんどん興趣がそがれ、観ている側の気持ちが冷めていく。
それまで緊張感のある映像を積み上げてこられたのに、
なんでそんな安易なラストにしちゃうかな。
残念。

そうした欠点は無視できないほどに大きいものの、
トータルとしてはなかなかの作品。
骨太の映画に仕上がっていて、役者陣も好演。

高良健吾さんの半グレぶりは実に堂に入ったもの。
善と悪を揺れ動く存在を見事に演じられていた。
善に徹しようと苦悩する刑事役の大東駿介さんもはまっていた。
鍵を握る存在の石田卓也さんは、私にとってはアニメ映画「時をかける少女」での千昭役の声の出演が鮮烈。
椎名桔平さんに加え、
佐藤浩市さんまで出演されていたのには驚いた。

手の込んだ脚本で、
監督としてはこうした話が撮りたかったのだろうが、
残念ながらうまくいったとは言えない。
無理が重なり、
終盤崩壊してしまった。
とはいえ、序盤からへなへなな映画も数多くあるなか、
本作の緊張感はなかなかのもの。
本作が長編デビューとあれば、次回作にも期待が高まる。

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