SSブログ

映画評 「痛くない死に方」 [映画評]

在宅医療の分野で著名な長尾和宏医師の著書「痛くない死に方」「痛い在宅医」を原作にした作品。
終末医療をめぐって、患者とその家族、医師の葛藤が描かれる。

映画の序盤は心配な流れ。
設定や作りが大雑把に感じられたし、役者さんの演技もわかりやす過ぎて、興が醒める感じがあった。
しかし中盤以降、奥田瑛二さん、宇崎竜童さんが出てきてからはしっかり。
お二人の枯れた演技は、映画の説得力を増し、落ち着いて観ることができた。

主演は、柄本佑さん。
安定した演技はさすが。
患者の家族を演じられた坂井真紀さん、大谷直子さんも、積み上げてきた年輪を活かす演技を披露されていた。

さて、タイトルは「痛くない死に方」となっているが、死に際して全く痛くないということは実際にはありえないだろう。
病気に負けて死んでいくのだから苦しくて当然である。
しかし、何本もの管につながれ、意志をなくして、おぼれるように死んでいくのではなく、
静かに枯れるように死んでいく道を選びたいという人も少なくないだろう。
ただし、言うのは簡単だが、実践するのは容易なことではない。
本人もしんどいが、
面倒を見る側も、夜も昼も心身ともに休まる暇がない。
何日間、と決まっているのならともかく、いつまで続くのかわからないのだから、気持ちが折れそうになることもしばしばだろう。
お医者さんに、なるべく痛みが出ない薬を処方していただくことはできても、
召される時期の調整までをお願いすることができないから。

この映画では、柄本さん演じる若手の医師が、いろいろな人の死にざまを見て成長していく様子が描かれる。
ほのかな希望が持てるエンディングにもなっている。
実際にそううまくはいかないと思うが、映画としてはあれでよかったと思う。
客席には一定以上の年齢の方が目立ったが、身につまされる話になっていただろう。

「痛くない死に方」は、多くの人が自分事としてとらえるだろう作品。
観終わると、重いものを受け取った気分になる。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。