SSブログ

映画評 「凪待ち」 [映画評]

今、白石和彌監督は、最も「撮れている」監督と言えるかもしれない。
2017年の「彼女がその名を知らない鳥たち」から、
2018年には「サニー/32」「孤狼の血」「止められるか、俺たちを」、
2019年には「麻雀放浪記2020」「凪待ち」、
と次々に監督作が公開されている。
大ヒットする、というより良作を次々に送り出しているという感じで、
映画界でも最注目人物の一人と言っていいだろう。

本作は、奇をてらいにてらって壮絶に自爆した「麻雀放浪記」から打って変わって、
白石監督の真骨頂が炸裂している。
容赦ない暴力、
救いのない生活。
誰にでもある人間の駄目なところを、
身も蓋もなく率直に描いている。

主人公は、自ら生きている資格がないと言う存在。
競輪から離れられず、内縁の妻のお金をくすねては溶かしている。
人に信じてもらっても簡単に裏切る。
わかりやすい駄目な人。
演じているのは、香取慎吾さん。
熱演だが、香取さんでなければ、というところまでは至らない。

素晴らしかったのは、年老いた漁師役を演じられた吉澤健さん。
ご自身の代表作となるような作品に巡り会われたのではないだろうか。
「洗骨」の大島蓉子さんといい、長いキャリアの末に、こうした役を務められたことに感服する。
各種映画賞において助演男優賞にノミネートされることと思う。

不思議なのは、映画の売り方。
映画のポスターは、
「誰が殺したのか?
なぜ殺したのか?」
と問いかけるが、ミステリーや謎解きの要素は皆無。
誰が、なぜこんなコピーを書いたのか?
とそちらが疑問になる。

「凪待ち」は、白石監督らしい作品。
痛い物語だが、しっかり作られてあり、改めて力量に感服する。
「彼女がその名を知らない鳥たち」や「孤狼の血」といった映画を観てしまった後だけに、
驚きはないが。
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。