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映画評 「茶飲友達」 [映画評]

「茶飲友達」という映画が、じわじわ広がってきている。
はじめは1館だけで封切られたそうだが、好調な動員を受けて25館に拡大。
「カメラを止めるな!」と同じENBUゼミナールの製作とあって、
あのときのムーブメントの再来か、などとも言われているようだ。
しかし、誰が観ても楽しかった「カメ止め」と比べ、「茶飲友達」は重い。
ああした大ヒットを期待するのは酷と言うものだろう。

それはそれとして、作品の出来栄えは上々。
目の肥えた映画ファンの口コミが広がるのも納得である。
脚本がよくできているし、
出演陣の頑張りも素晴らしい。

本作は、高齢者向け売春クラブが警察に摘発された事件をもとに、
外山文治監督が着想し、オリジナルの脚本を書いたもの。
「ソワレ」は鮮烈だったが、今作もドシンと来る。
ワークショップ・オーディションで出演者を選抜し、
手作りで練り上げられている。

高齢者の孤独、
高齢者の性、
若者の貧困、
シングルマザー、
などの重いテーマに正面から向き合いながら、
家族の意味を問いかける作品となっている。
ただし、重く暗いだけの映画ではない。
ところどころにユーモアも散りばめられ、
楽しく観ることもできる。

主演は岡本玲さん。
元風俗嬢で高齢者向け売春クラブのオーナーという設定。
岡本さんのイメージとはまるで違う役柄だったが、説得力を持って演じられていた。
明と暗のコントラストが印象的。
他の出演者は、ワークショップで選ばれたこともあり存じ上げない方がほとんどだったが、
それがリアリティをグッと増させていた。

残念だったのは、築き上げて来ていたはずの絆が、
ひとつのきっかけで脆くも崩壊してしまう流れ。
そこがあまりにもあっという間過ぎて、ちょっと拍子抜け。
脆くも崩壊するのはいいのだけれど、
もうひと押しほしかった

「茶飲友達」は、今作られる意味がある作品。
切実なテーマに向き合っている。
説教臭くなく、あっけらかんでもなく、
しっかり踏み込んで描き、映画としてもきちんと成立させているのは素晴らしい。

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