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新海誠さんに圧倒される [映画評]

新海誠さん監督の「すずめの戸締り」を観た。
息を呑み続けるすごい作品だった。
名作、傑作というのとはちょっと違う、
強烈な熱量を帯びた作品だった。

作家性を保ちながら
興行的な成功も勝ち取るのは難しいことだと思う。
ものをつくる人間である以上、
作家性を失うことはできないはずだが、
興行的な成功がなければものを作り続けることはできない。
多くの人に届かなければ、作家性といっても独りよがりになってしまう。

いや、
作家性を失うことはできないはず、と書いたが、
そんなものはかけらも感じられない映画はいくらでもある。
なんのために撮ったのか首をかしげたくなる映画があふれている。

「君の名は。」「天気の子」で連続ヒットを飛ばした新海誠監督は、
作家性かエンタメか、どちらかに寄った作品を作っても誰も文句は言わない存在である。
初期の作品のように、作りたいものを作っている感じの作品でも、
タイムループしたり花火が上がったりのポップ路線でも、
それはそれで受け入れられるだろう。
しかし新海監督はそうしなかった。
そうはできないのだろう。
全身全霊で作ることしかできないのだろう。

新作「すずめの戸締り」では、
どっから思いつくんだ、
と聞きたくなるストーリーテラーとしての腕力や、
絶対に賛否両論が分かれる「3.11」への向かい方に、
ぐわっと胸をつかまれた。
描きたいこと、伝えたいことを映像にしながら、
大衆性も失っていない。
そのすさまじさに言葉を失った。

トップの位置にいる人が、
その力を振り絞り、
トップにいるにふさわしい作品を作られた。
その辛さ苦しさ喜びは、その地位にいる人しかわからないものだろう。

「すずめの戸締り」を観に行くと、来場者特典として
「新海誠本」なるものがもらえる。
なかなか充実した内容なのだが、そのなかのインタビューで、新海さんはこんなことを話している。

「自分の中にあるものを磨き続けて、全力で放つしかない」
「下る直前のピークにいるという感覚もまだあるんです。
この感覚や体力や欲望がまだあるうちに、自分たちのすべてを絞り切るような作品を作らなければならない」

新海さんの覚悟が伝わってくる言葉である。
そして、作品を観ると、それが口だけではないことがひしひしと伝わってくる。

アニメに携わる皆さん、
映画に携わる皆さん、
新海さんの作品を観て、
どう感じられましたか?
どう受け取られましたか?
次は皆さんの番です。

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