SSブログ

映画評 「あちらにいる鬼」 [映画評]

本作は、
直木賞作家・井上荒野さんが、
自身の父である作家・井上光晴さんと母、そして瀬戸内寂聴さんをモデルに創作した小説を映画化したもの。
井上光晴さんの小説は、若い頃読んだ記憶があるが、
何を読んだのかも含めあまり覚えていない。
瀬戸内寂聴さんは超のつく有名人。
井上荒野さんももちろん有名。

光晴さんは、現在の価値観では到底許されないようなひどい人。
あっちやらこっちやらに女を作り、
そのしりぬぐいを女房にさせたりする。
寂聴さんは、瀬戸内晴美を名乗っていた頃、光晴さんと出会い愛人関係に。
出家されたのは光晴さんとの関係を断つためだったという。
そんな光晴さんと寂聴さんの間で翻弄されながらも強く生きたのが荒野さんの母。
今はいないタイプなのかもしれない。
しかし、我慢しているだけの弱い存在ではない。

映画は、光晴さんの破天荒な日々を描く。
苦しくて、でもそうするしかなくて火宅なのではなく、単にそういう人。
文学的な苦悩とか、
思想的な煩悶とか、
特に映されない。
単にそういう人。
それでいい。
光晴さんの奥さんの辛さと幸せ、
寂聴さんの苦しみもよく伝わって来た。

光晴さん役を豊川悦司さん。
まさにはまり役。
どうしようもないが憎めない男を魅力的に演じた。
寂聴さん役に寺島しのぶさん。
頭を丸めるシーンを一発撮りで実際に演じるという女優魂に称賛が集まっているが、
そのシーンだけではなく全編を引っ張っていた。
光晴さんの妻役に広末涼子さん。
このところ、映画ではコミカルな役が多かった広末さんだが、今作はシリアス。
いいキャスティング、いい演技だった。

「あちらにいる鬼」は、大人向けの映画。
エロいとかではなく。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事