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映画評 「喜劇 愛妻物語」 [映画評]

最初から最後まで妻が夫を口汚く罵る映画である。
ホームドラマ的な愛情のある悪口ではなく、耳をふさぎたくなるような罵詈雑言。
とても子供には聞かせられない。
気分が悪くなる人もいるかもしれない。

しかし私はこの映画を楽しんだ。
ひどいことばっか言うなあ、と思いながら、なぜかにやにや楽しんだ。
この映画を楽しく観ることができる人を好きだな、と思った。

一方、こんな映画、大嫌いだ、と思う人もいるだろう。
いくらなんでもひどすぎる、と感じる人もいるだろう。
そういう人のことも好きだな、と思う。

喜劇、というだけあって、笑えたという人もいるだろう。
喜劇、というのにちっとも笑えなかった、という人もいるだろう。
観る人を選ぶ映画、というのとは少し違うと思うが、人によって楽しめるかどうかが大きく変わる作品ではあるだろう。

主人公は、売れない脚本家。
稼ぎが少ないこともあって、妻に散々責められている。
ネチネチ言われているどころではなく、盛大に。
久しぶりに仕事がものになりそうになり、香川に家族連れでシナリオハンティングに行った際に起きる騒動を描いている。
コメディ作品であり、何もかもが大げさ、ドタバタ。
ただし、PG12作品であることが示しているように、ほのぼのはしていない。

原作・脚本・監督をまとめて果たしたのが足立紳さん。
『百円の恋』で日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を獲得された方である。
本作は、私小説的要素もある作品で、まさに足立さんの足立さんによる映画。
撮りたいものを撮った、という躍動感が伝わってくる。
なんでこんなものを撮りたいのよ、と思う人も少なくないだろうが、こういう人こそ映画を作る人なのだ。
映画らしい映画であったとも思う。

駄目な夫役を濱田岳さんが演じる。
どんな役もこなしてしまう濱田さんだが、駄目な役は失礼ながらはまり役。
本作もお見事。
濱田さん以上にスクリーンを制圧していたのが妻役の水川あさみさん。
本当にひどい女の役で、よく受けられたと思う。
素晴らしかった。

「喜劇 愛妻物語」を私は楽しく観た。
ストーリーらしいストーリーもなく、ただただ夫が妻に虐げられている映画なのだが、
最後の泣き笑いのところでは私はにやにや笑いを禁じられなかった。
監督は、悲惨の中に笑いがあることをよくご存じだ。
喜劇、というタイトルに惹かれて、気楽に笑おうとして観に行くと火傷をしてしまうので、ご用心のほどを。

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