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映画評 「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 [映画評]

「言いたいだけやん」
というツッコミがある。
なにやらツボにはまった言葉、妙に心地よいフレーズなどを、意味もなく会話に放り込んできたときに、相手方が言う。
だって、言うだけで楽しくなるんだもん、言うでしょ。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。
ちょっと長いが、フルに言いたくなる。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。
書いているだけで気持ちがよくなる。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。

本作は、京都アニメーションが去年の放火事件のあと初めて完成させた映画である。
本来は、今年1月から公開される予定だったが、放火事件の影響で4月に伸び、
さらに新型コロナウイルスの影響でそれも延期になっていた。
京アニファンとしては特別な思い入れがある作品であろう。

私はテレビシリーズをちゃんと観ていない。
家人が借りてきたビデオで第6話を見て、「こりゃ、すごい」となっただけなので、にわかですらない。
それでも、かなりの高揚感をもって本作の公開を待った。
すごい作品になっているのではないかと期待した。

観た結果、
ううむ、微妙であった。
期待外れ、ということはない。
楽しかったし、心を揺さぶられるシーンもあった。
絵の美しさは言うまでもないが、
声優さんたちの言葉の美しさも胸に響いた。
しかし、佳作ではあっても、傑作とまでは至らなかった。
残念、ということはないが、微妙。

ご存じない方も多いと思うので、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの簡単なあらすじを書くとこんな感じである。
『数年間にわたった大陸戦争が終結。その戦場で“武器”と称され、とんでもない戦闘力を備え、戦うことしか知らなかった少女ヴァイオレット・エヴァーガーデン。彼女は戦場で両腕を失い、義手を付けることを余儀なくされる。戦後、ヴァイオレットは、“自動手記人形”として郵便社で働きはじめる。ヴァイオレットは、戦場で「愛してる」と伝えられたことがあったが。心を持たない武器として育ったために、その意味がわからなかった。彼女は、仕事と日常を通じて人と触れ合いながら、その言葉の意味を探していく』。
なお“自動手記人形”とは、人間の肉声を文字として書き起こせる機械人形のこと。
そこから転じて、人形のように代筆業を行う人間のことも「自動手記人形」と称されていて、養成学校もある。
通称は「ドール」である。

と書かれてもなんのことかわからないかもしれないが、すごい設定である。
自動手記人形、通称ドール。
これだけで何だか魅了されてしまう。

傑作までには行かなかったように感じたのは後半の展開。
ヴァイオレットがずっと思っていた人との再会ができるかどうか、というところであり、
クライマックスなのだが、ここがもう一息。
思っていた人の描き方はあれでよかったのだろうか。
いろいろな要素が、一気に微妙になってしまった。

それでも、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」はいい作品。
ゆるい人なら、涙腺崩壊は間違いない。
言葉の大切さにも改めて向き合いたくなる。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
いい響きだ。

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