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映画評 「桜色の風が咲く」 [映画評]

本作は、世界で初めて常勤の大学教員となった盲ろう者である福島智東京大学教授をモデルにした伝記ドラマ。
盲ろう者とは、視覚と聴覚の重複障害者のことを指し、
福島教授は幼い頃に視力を、18歳に聴力を失われた。
映画では、そのあたりの経緯も描かれる。

実話をもとにしているだけに、
再現ドラマを観ているような感覚になる。
それはちと悪い意味でもあって、
特に前半の病院での描写は悪者作りが露骨過ぎて、
興醒めする箇所がある。

それにしても、
目が見えなくなる恐怖、
音が聞こえなくなる恐怖は、いかばかりだろう。
これほど深い絶望はほかにはなかなかないだろう。
映画を観ることができている幸せにも思い至る。

実際の福島さんは東大教授にまでなられるのだが、
本作はサクセスストーリーやほのぼのとした人情ものではなく、
厳しい現実に直面するシーンや、
家族内での衝突も描かれる。

困難に立ち向かう息子を支える母役に小雪さん。
お母さん役が板につく女優さんになられた。
青年期の福島さん役に田中偉登さん。
意思が強く、やんちゃで、それでいてやはり弱いところもある青年をしっかり演じられた。
子役がいい映画でもあった。
幼年期、少年期の福島さんを演じた二人の男の子が実によかった。

本作は、学生時代の福島さんの姿を描いて終わる。
観ている側としては、その後の活躍も見せていただき、
スカッとさせて欲しかった気もする。
映画的エクスタシーを求めてはいけなかったか。

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MVPが獲れなくても大谷の今シーズンも想像を絶していた [ヨモヤ]

例えば5年前に、メジャーリーグの選手たちに向けて、
「これからの10年間に、シーズン60本以上打つ選手が出てくるか?」
と聞けば、
「60本はなかなか大変だけど、まあ出てくるんじゃないか」
という答えが多かったのではないかと思う。
では
「これからの10年間に、同じシーズンに投手として10勝以上、打者として30本以上打つ選手が出てくるか?」
と聞けば、
「んな奴、出てくるわけないだろう」
と誰もが答えただろう。

アメリカン・リーグのMVPは、
リーグ最多本塁打記録を更新する62本塁打を放ったヤンキースのジャッジが獲得した。
大谷は2位。
この結果は、多くの人が予想したとおりであり、意外性はない。
しかし、どちらの記録が「とんでもない」かと言えば、
おそらく論を待たないだろう。

大谷は、
打者として規定打席に達し、
投手として規定投球回数をクリアした。
史上初の快挙である。
このことのとんでもなさは、なんと表現したらいいのだろう。
まあとにかくとんでもないのである。

もちろん、ただ多くの試合に出ただけではない。

打者として、
本塁打リーグ4位、
打点リーグ7位。
誰が見ても一流の中の一流である。

投手として、
防御率リーグ4位、
勝利数リーグ4位、
奪三振数リーグ3位、
サイ・ヤング賞投票第4位。
こちらも一流の中の一流である。

大谷に刺激を受けて、
二刀流に挑戦する選手が増えるかもしれない。
しかし、このレベルで成り立たせることができる選手が生まれる確率は、非常に小さいだろう。

大谷の2022シーズンは、
2021に続いて想像を絶していた。
いやはや、とんでもない。

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M-1 コウテイは残ったが金属が・・・ [ヨモヤ]

8月から予選が行われてきたM-1グランプリ2022もいよいよ佳境。
個人的に注目していたのは、
ハチャメチャに見えつつ実はしっかりした力を持っている「金属バット」、
次にブレイクするのはこの2人ではないかとかなり前から目をつけていた「コウテイ」、
女性漫才師の枠を超えそうな「Aマッソ」
といった面々だった。

ここで発表された準決勝27組の中に含まれていたのは、
上記3組中では「コウテイ」だけ。
金属は、まさかの落選。
その他、
見取り図、インディアンス、アインシュタイン、ランジャタイ、ゆにばーす、モグライダー
といった面々も準決勝に残れなかった。

準決勝に進出した栄えある27組は以下の方々。

真空ジェシカ/シンクロニシティ/ママタルト/ヤーレンズ/
令和ロマン/ななまがり/ハイツ友の会/THIS IS パン/
カゲヤマ/ダイヤモンド/ダンビラムーチョ/ケビンス/
ヨネダ2000/男性ブランコ/ストレッチーズ/さや香/
オズワルド/ウエストランド/キュウ/ミキ/からし蓮根/
かもめんたる/カベポスター/コウテイ/マユリカ/
ロングコートダディ/ビスケットブラザーズ

正直、知らないコンビも多く含まれている。
しかし、ここに残っている面々が面白くないわけがない。

注目は、キングオブコント王者にして、ちっとも売れていない「かもめんたる」。
毒の強いコントをしていたが、漫才もあんな感じなのだろうか。
是非、決勝で観てみたい。

さて、実は準々決勝敗退組も、またファイナルに行く道が完全に閉ざされたわけではない。
GYAO!ワイルドカード枠というものがあり、
準々決勝で落ちたうちの一組だけが準決勝に進出できる可能性があるのだ。
準々で落ちた面々は残った面々より豪華であり目移りするが、
ここで金属がなんとか拾われるのではないかと思う。
そして、奇跡のファイナル出場からの・・・
などと夢を広げるが、
金属のお二人はM-1とは縁がないのかなとも思う。

ジャパニーズドリームの詰まったM-1決勝まで、
あと少し。

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西武20人目のFA流出も、いなくなったものは仕方がない [ヨモヤ]

オリックスが、西武から国内フリーエージェント権を行使した森友哉捕手の獲得を発表した。
西武としては、MVP・首位打者の経験を持つ正捕手を
同一リーグの優勝チームにさらわれたことになる。
これはかなりの痛手だろう。

西武からFAで流出するのはこれで20人目。
その20人は以下のとおりで、改めてすごいメンバーである。

1994年 石毛宏典、工藤公康
1996年 清原和博
2003年 松井稼頭央
2005年 豊田清
2007年 和田一浩
2010年 細川亨
2010年 土肥義弘
2011年 帆足和幸
2011年 許銘傑
2012年 中島裕之
2013年 涌井秀章、片岡治大
2015年 脇谷亮太
2016年 岸孝之
2017年 野上亮磨
2018年 浅村栄斗
2018年 炭谷銀仁朗
2019年 秋山翔吾
2022年 森友哉

今回の森を含めて、細川、炭谷と正捕手が次々抜けているのも特徴だろうか。

しかし、これだけ選手を抜かれても、
西武がチームとして極端に弱小化したかというとそんなこともない。
1995年シーズン以降の28年間でリーグ優勝を7度、Aクラス入り22度というから、
胸を張れる成績といってもいいだろう。

とは言っても、
これだけ毎年のように主力選手に出て行かれると、
ファンの心境は穏やかではいられないだろう。
球団に対して、何とかしてほしいと思うのが普通だと思う。

扇のかなめのポジションを失った埼玉西武ライオンズ。
2番手捕手が育ってきているわけでもないから、来年も厳しいペナントレースになりそうだ。
しかし、西武はある意味、流出慣れしているはずだ。
いないものはいないものとして、そこを埋め合わせてやってきた。
今回も、なんとかかんとかやりくりしてしまうのではないか。
そんな気がする。

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映画評論家はいらないか? [映画評]

映画評論家なんかいらない、
という方が少なからずおられる。
その理由は
・あてにならないから
・どうせ映画会社の一味だから
・カッコつけて通好みの作品ばかり勧めてくるから
など、様々であるようだ。

たまたまYouTubeを観ていたら、
オタキングこと岡田斗司夫さんが、
「映画評論家はもうオワコンです!」
と主張している動画に出くわした。
岡田さんは映画評論家がいらないと思う理由は、先に掲げたものとは違い、
「映画.comというサイトのレビュー評価がほぼほぼ当たっているから」
というものであった。
映画.comにおけるレビューは、
公開当初はばらつくが、一定の期間経過後の点数はほぼ正当なものであり、
いい映画か悪い映画かはこれを見れば大抵わかるので、
映画評論家はいなくても大丈夫、というのである。

さて、そうだろうか。

私は、全然そうは思わない。

レビューによる点数が3.8で並んでいる映画であっても、
観る価値が全く違う場合がいくらでもある。
点数にしてしまえば同じくらいになっても、
映画の持つ力や普遍性がまるで違う場合がある。
観る力がある人がしっかり観て、それを伝えてくださるのはありがたい。

もちろん私も、評論家の方がおっしゃっていることを鵜呑みにする気は全くない。
むしろ「そうかしら」と思いながら読むことの方が多い。
だとしても、映画を観るプロが語る言葉は参考になる。
そして、そのおススメに従うことで思わぬ掘り出し物に出会える可能性もある。

評論家には、優れた作品を後世に伝える役割もある。
いい評論家の方にいい評論をしていただき、
いい作品を広めていただきたい。
後の世に残していただきたい。

さて今週は、どんな映画をお勧めされているだろう。

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映画評 「窓辺にて」 [映画評]

毎年、2本、3本と映画を作り続けている今泉力哉監督。
基本、「辛気臭い」映画なのだが、私の好みでもあって大抵観てしまう。
半径0.5mくらいの狭い世界のお話で、テーマも似通っているのだけれど。

本作も、いつもの今泉ワールド。
ゆるゆるとときは流れ、
こういう映画もありよのう、
などと思う。
ちょっと贅沢な時間の使い方。

しかし、今作は、過ぎるというかなんというか。
上映時間が長過ぎるというのもあるが、それだけではなく、
作り方に余裕があり過ぎるように感じた。
登場人物は、皆おとぎ話の中の人たちのよう。
小奇麗で浮世離れしていて。

主人公の男性は、
妻が浮気しているのを知ったにも関わらずショックを受けなかったことにショックを受けた、
という設定なのだが、
正直、そこに新しさはないし、共感するというよりよくある話と思えてしまった。
繊細な人かと思いきや、
そんな自分の悩みをそこらじゅうで相談する。
自分の恥をさらすのは勝手だが、奥さんあまりに可哀そう。
変なの。

他の登場人物も、皆、人の心を持っているのかどうか疑いたくなるような設定。
登場人物が動いているというより、
監督の頭の中で動かしたものをそのまま映画にしてしまった感じ。
共感できない、
というだけでなく、
あまり美しくないものを延々見せられている気分になった。

今年公開された今泉監督関連作品では、
脚本を担当された「愛なのに」が一番面白かった。
愛があった。
監督された「猫は逃げた」と本作「窓辺にて」からは、愛が感じられなかった。

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新海誠さんに圧倒される [映画評]

新海誠さん監督の「すずめの戸締り」を観た。
息を呑み続けるすごい作品だった。
名作、傑作というのとはちょっと違う、
強烈な熱量を帯びた作品だった。

作家性を保ちながら
興行的な成功も勝ち取るのは難しいことだと思う。
ものをつくる人間である以上、
作家性を失うことはできないはずだが、
興行的な成功がなければものを作り続けることはできない。
多くの人に届かなければ、作家性といっても独りよがりになってしまう。

いや、
作家性を失うことはできないはず、と書いたが、
そんなものはかけらも感じられない映画はいくらでもある。
なんのために撮ったのか首をかしげたくなる映画があふれている。

「君の名は。」「天気の子」で連続ヒットを飛ばした新海誠監督は、
作家性かエンタメか、どちらかに寄った作品を作っても誰も文句は言わない存在である。
初期の作品のように、作りたいものを作っている感じの作品でも、
タイムループしたり花火が上がったりのポップ路線でも、
それはそれで受け入れられるだろう。
しかし新海監督はそうしなかった。
そうはできないのだろう。
全身全霊で作ることしかできないのだろう。

新作「すずめの戸締り」では、
どっから思いつくんだ、
と聞きたくなるストーリーテラーとしての腕力や、
絶対に賛否両論が分かれる「3.11」への向かい方に、
ぐわっと胸をつかまれた。
描きたいこと、伝えたいことを映像にしながら、
大衆性も失っていない。
そのすさまじさに言葉を失った。

トップの位置にいる人が、
その力を振り絞り、
トップにいるにふさわしい作品を作られた。
その辛さ苦しさ喜びは、その地位にいる人しかわからないものだろう。

「すずめの戸締り」を観に行くと、来場者特典として
「新海誠本」なるものがもらえる。
なかなか充実した内容なのだが、そのなかのインタビューで、新海さんはこんなことを話している。

「自分の中にあるものを磨き続けて、全力で放つしかない」
「下る直前のピークにいるという感覚もまだあるんです。
この感覚や体力や欲望がまだあるうちに、自分たちのすべてを絞り切るような作品を作らなければならない」

新海さんの覚悟が伝わってくる言葉である。
そして、作品を観ると、それが口だけではないことがひしひしと伝わってくる。

アニメに携わる皆さん、
映画に携わる皆さん、
新海さんの作品を観て、
どう感じられましたか?
どう受け取られましたか?
次は皆さんの番です。

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市場はいつもこんな感じ ~ 一方的な円安は進まない ~ [経済を眺める楽しみ]

円安が進み、
1ドル130円をあっという間に突破し、140円、150円となって行った頃、
こんなことを言う人が結構いた。
「日米の金利差は拡大する一方であり、FRBが利上げを続ける以上、円安は止まらない」
「人口が減り、国力も下がる日本の円を買おうとする人はいない」

そう言われてみればそうかな、
という気がしなくもないが、
こうしたことが本当に当てはまっているのなら、
バブル崩壊後、ずっと円安が続いているはずである。
実際には上がったり下がったり、
いやむしろ、一時的には円高が行き過ぎることすらあった。
市場は、それほど単純なものではないのだ。

ここに来て、外国為替相場で円を買う動きが加速している。
一時1ドル150円を超えていたものが、11月12日現在では138円台。
約2カ月ぶりの円高ドル安水準となっている。

直接の原因は、
10月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、
米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが事前予想よりゆるやかになるのではないかとの思惑が広がったこと。
インフレの鈍化が見られたことで、
FRBは今後も利上げはするだろうが、
そのペースが落ちるのではないかと考えられたのである。

円安は加速する一方、
というある種無責任な言葉に乗せられた方たちが大きな損を被っていないといいのだが。

これからも為替相場は一進一退が続く。
長期的なトレンドは円安の方向であるかもしれないが、
常に一方向ということはないだろう。
真剣に相場に向き合っているわけでもないコメンテーターの皆さんの言葉には、
十分に注意しよう。

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村田さんのピッチングを忘れない [ヨモヤ]

元プロ野球選手でロッテのエースだった村田兆治さんがお亡くなりになった。
72歳。

村田さんは、すごいピッチャーだった。
マサカリ投法と呼ばれた独特のフォームから繰り出されるストレートとフォークは、
十分メジャーでも十分通用したと思う。
プロ野球選手らしい、
少し人間離れした人だった。
川崎球場が似合った。

肘の故障後、
ジョーブ博士により左腕の腱を右肘に移植するトミー・ジョン手術を受けられ、
その後、「サンデー兆治」として復活された。
ジョーブ博士、トミー・ジョン手術といった言葉が知られるようになったきっかけは村田さんだった。

無骨な姿は、
「昭和生まれの明治男」と言われるのにふさわしく、
60歳で130キロの速球を投げるというとんでもないストイックさを持ち合わせた方だった。

村田さんはお亡くなりになったが、
村田さんの記憶は消えない。
「鉈のような」と言われたうなりを上げるストレート。
壁に当たったかのように急激に落ちるフォークボール。
ずっと忘れず、
ずっと語り継ぎたい。

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少年隊がすごすぎる [ヨモヤ]

ジャニーズ事務所が揺れている。
副社長の滝沢秀明さんの退社に続き、
『King&Prince』、通称キンプリの
平野紫耀さん、岸優太さん、神宮寺勇太さんがグループから脱退。
一体何が起きているのか、ファンならずとも気になる展開になっている。

キンプリの平野くんは、海外での活動を目指してきたがそれが難しくなったのが、
今回の決断の理由のひとつと話しているようだ。
そこで、ジャニーズで世界レベルのグループって何だったかなと振り返ったら、
最初に少年隊がピンと浮かび、
そのほかには浮かばなかった。

近年、少年隊の再評価が進んでいる。
「令和の少年隊論」という本が出版され、
ネットでも彼らの凄さが語り合われている。

彼らが活躍していた当時は、あまりそのすごさがわからなかった。
「また新しいジャニーズ系が出て来たな」
「結構歌えるじゃん」
くらいの感想で。

今、当時の姿をYouTubeで見ると、正直驚く。
ダンスの凄さには目を見張るものがある。
あれだけ踊り狂っていてしっかり歌えているというのが脅威である。
あれから何十年も経つのに、
少年隊を超えるグループが出ていないのが残念である一方、
少年隊を超えるのはちょっと無理じゃないかとも思えてくる。
当時は海外という選択肢はほぼなかっただろうが、
今だったらどうだろう。

YouTubeの動画は、どんどん消されて行ってしまうので、
昨日まで見られた少年隊の雄姿が今日は見当たらない、などということがある。
(まあ、また復活するけれど)
しっかり目に焼き付けておこう。
https://www.youtube.com/watch?v=-JPx7eEAg9I

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