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もともと入りと出がまったく噛み合っていない地方交付税制度 [公会計]

先日NHKのサイトに
「地方交付税 4800億円分が不足 国の税収減で」
との見出しのニュースが掲載された。

内容を要約すると、
・昨年度の国の税収が政府の見積もりを1兆7000億円余り下回り、各自治体に交付した地方交付税の総額16兆3000億円のうち、4800億円分が財源不足になる。
・地方交付税が財源不足となった場合、明らかになった年度の翌年度以降の交付額で調整することになっている。
・高市総務大臣は、新型コロナウイルスの影響もあり、来年度に向けては例年にも増して厳しい状況にあり、地方の財政運営に影響が出ないよう努力する考えを示した。
というものである。

さらに、
「地方自治体の財政を支援するための地方交付税は、法人税や所得税などの国税が財源となっていて、毎年度、その年度の税収の見積もりを基に交付額を決めています。」
との解説もついている。

この記事を読むと、こう思う人が大半だろう。
①地方交付税は国税が財源となっていて、その範囲で配分額が決められているらしい
②入ってくるはずの税収が下がれば、自治体に交付される地方交付税もそれに合わせて下がる仕組みのようだ

ひょっとしたら自治体にお勤めの方のなかにもそのように理解されている方がおられるかもしれないが、
当然のことながら、上記の理解は間違っている。

まず①について。
確かに地方交付税に割り当てられる国税は、所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%といった具合に決められている。
しかし、これはこの分が地方交付税として使われることが決められているというだけで、上限を定めたものではない。
地方交付税の総額は、総務省が作る「地方財政計画」によって決められる。
この計画は地方の実情を反映させるものであるが、当然に財務省との交渉の中で額が調整されるものであろう。
とにかく、地方交付税の原資となる額とは違うところで決められるのである。
足らない分は、別途考える仕組みとなっている。

②の考え方は、本来なら逆になるべきであろう。
なぜなら、税収が下がるということはその分自治体の歳入が減るということであり、
さらに景気が悪ければ生活保護費などで歳出が増えると見込まれるため、
地方交付税で埋めるべき歳入と歳出の乖離幅が広がるからである。
地方交付税には財源確保機能があるとされており、苦しいときほど自治体への交付額が増えるのがそもそもの形である。

なんだかややこしかったかもしれない。
NHKのサイトに書かれている内容は誤解を生じかねないものであったと思うが、
丁寧に解説したら相当なボリュームが必要なのでやむを得ない面もある。
とりあえず、地方交付税は入りと出が全く別の要素で決まる制度である、
ということを押さえていただければと思う。
そして、
「それって何だかおかしくない」
という感想はごく自然であると思う。

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