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映画評 「なぜ君は総理大臣になれないのか」 [映画評]

本作は、小川淳也衆議院議員の17年間を追ったドキュメンタリー。
タイトルは、総理大臣になれない理由を問うているが、
これを自民党の石破さんや岸田さんに聞くのならわかるものの、
野党の、しかも失礼ながらそれほど全国的な知名度の高くない議員さんに聞く質問としては、
「あれ?」
と首をかしげる。
もちろん、わざとされている問いであり、
一つには小川議員の志の高さを伝えており、
もう一つには小川議員の、ある意味での政治家に向いていない面を指摘しており、
さらにもう一つには、小川議員のような人が上に行けない日本の政治状況を嘆いているのだろう。

この映画について評すると、どうしても小川議員への評と混同されてしまいそうだが、
あくまでも映画そのものについて書くので、その旨、ご理解いただきたい。

まずなんといっても残念なのは、小川議員の魅力が十分に伝わってこないことである。
真面目な方であり、
現状への強い危機感を抱いておられ、
多くの方に支えられておられることもわかる。
しかし、政治家としての器や、総理大臣を目指すにふさわしいカリスマ性などは、
この映画からは伝わってこなかった。
そのため、観ている側に
なぜこの人がもっと認められないのか、
という義憤が生まれてこない。
いい人だなあ、とは思えても。
謝ったりお願いしたりしている街頭活動や、
政府を責める質問だけではなく、
小川さんが自分の言葉で自分の政策を語っているところをもっと見たかった。

逆に、際立っていたのは周りの方々。
特に、奥さんや二人の娘さんの献身にはぐっと来るものがあった。
娘さん二人は「絶対に政治はやらない」と話していたが、
「でも、負けたくない」とも言っていて、
そうした強さは実に政治家向きだと感じた。
二世議員の強さは、こうしたところにもありそうだ。
また、この映画のクライマックスとも言えるのは慶応大学の井手英策教授による応援演説。
これが実に胸に迫る内容で、
かつ演説力もやたらと高く、
聞いている小川議員や家族も泣いてしまっている。
ただ、この場面だけ登場される方においしいところを持って行かれるのもどうなのかとは思う。

この映画を観て、
「こういう人に総理大臣になってもらいたい」
という感想を持たれる方もおられるようだ。
ただ、少なくとも本作の中では「これは」という政策が示されているわけではなく、
吸い込まれるような弁舌が披露されているわけでもなく、
映画への高評価も含めて、違和感を覚える。

とはいえ、2時間、楽しくというとちょっと語弊があるかもしれないが、
しっかり観られたのも確かである。
その意味では、なかなかの映画だと思う。
政治家を描くものとしては、
食い足りない、なんとも言えないもやもやしたものを抱えながらではあったのだが。

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