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少子化対策について改めて考えるきっかけに ~ 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」を読んで ~ [読書記録]

山田昌弘さんが書かれた
「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」
を読んだ。
山田さんは、著名な社会学者で、中央大学文学部教授。
「パラサイト・シングル」や「婚活」といった言葉を普及させたことでも知られている。

この本で山田教授は、日本の少子化対策について以下のような問題があったと主張されている。
それは、
・少子化問題の原因を欧米と同一視したこと
・一部の人の声や意識を、多数と間違ってきたこと
・少子化の主因は未婚化であることを見逃したこと
・結婚や子育ての経済的側面をタブーにしてきたこと
・「仕事は女性の自己実現だ」という認識にとらわれ過ぎてきたこと
・強い子育てプレッシャーをやわらげられていないこと
などである。

官僚や政治家が、
日本とは環境も考え方も歴史も違う欧米を参考にし、
自分の周りにいる「都会に住む高学歴の女性」の声を女性一般の意見と考え、
立案してきた政策が的を外してきた、というのである。

「デフレの正体」などで知られる藻谷浩介さんは別の本で、
「女性の一部ではありますが、本当は子どもが3~4人欲しい人もいるのです。だけど2人が経済的に限界なので、その先はあきらめることが多い。それが日本の出生率が2を切ってしまっている唯一最大の理由です」
と述べておられる。
つまり藻谷さんが考える少子化の原因は、結婚している人が望むだけの人数を生み育てられていないことのようだ。
唯一最大の理由、とまでおっしゃっている。
一方山田教授は、データを示しつつ、夫婦当たりの子どもの数は1970年代も2000年代も2前後で変化がなく、出生率が下がっている理由は未婚者の増加であるとする。
藻谷さんの主張とは全く異なっていることがわかる。

働く女性が増えている状況から、保育施設の必要性が高まっている。
この点への異論は少ないと思う。
しかし、保育施設を増やすことが少子化対策につながるかどうかという点については、冷静に考える必要がある。
山田教授の意見からすれば、
保育施設の必要性は認めるとして、
少子化対策事業はもっと別なことをするべきではないか、ということになる。

日本の少子化対策は、ずっと成功してこなかった。
この本の帯には、
「失われた30年。もう、戻ってこない」
とある。
確かに、失われたものはもう戻ってこない。
しかし、これから変えていけばいい。
まずは事実をしっかり分析すること、
間違っていた政策があったらそれを改めること。
あきらめるのは早いし、あきらめていい政策ではない。

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